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「詐欺師の小道具じゃかわいそう!」 風が吹けば桶屋が儲かる的な「DX(デジタル革命)」、本当の面白さ知ってる?!

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

ちょっと前にソフトバンクの「元部長」らが、被害額12億円超の投資詐欺事件をやらかして捕まりましたよね。

当時は現職だった「元部長」が仲間と共謀、本社の素敵な会議室で、自社のロゴが入ったウソ資料を配って投資を募る、借金でケツに火が付くとそこまでやるのか、という案件でしたが……先週末に事件の続報が報じられると、一部界隈で「元部長」の肩書が話題となりました。

その肩書はあまりにも長過ぎて、テレビの多くは「元部長」としか報じなかったんですが、正式な肩書は

「デジタルトランスフォーメーション統括部部長」

長いよ、そして出たわねデジタルトランスフォーメーション。そう、DXです。

この肩書に対し、SNSでは「だからDXなんて信用できないんだ」なんていう八つ当たり的な投稿もありましたが、実際一部ではかなり嫌われてるようです、DX。

確かに、DXってよく分からん、なんでDXでサーバ入れ替えなきゃいけないんだ? そのツールどこがDXなの? と疑心暗鬼な方も多く、今回の事件もDXって言えば何でも通っちゃう「謎の雰囲気」が悪用された気がしますが、実はDXってかなり歴史のある概念なんです。

2004年にスウェーデンの学者が発表した「デジタル技術って生活の色んな面を変化させて、影響を与えるよね、」という論文がDXの大元の定義となっており、この通り非常にシンプルな考えなんですが、これが日本でゾンビのように復活し、話がややこしくなったのは、2018年に経産省が発表した「DXレポート」から。

「もっとシステムとかツールとか刷新しないとDX乗り切れないよ、やばいよ」

というレポートの一部だけが切り取られ、DXにはサーバが必要だ、ツール刷新だ、そうすれば乗り切れまっせ(←違う)という「営業ネタ」に使われるようになったんですね。

もう完全に「DXどこ行った」状態ですが、では本来のDXってどんなモノなのでしょう。

これが本当のDXだ!

いきなりですが3択クイズ。将来クルマの完全な自動運転が実現したら、私たちの生活にどんな変化が現れるでしょうか?

① 商業地で土地の値段が安くなる

② 道路インフラの質が下がる

③ 駐車場やタイヤロックが立派になる

実はこれ全て正解。完全自動運転なら、休日のショッピングモールで満車の駐車場に並ぶ必要はありません。「〇時に迎えに来て」と車に指示すれば、買い物が終わるまでそのへん流すか、いったん家まで帰ってくれるでしょう。つまり駐車場の必要性が下がる=土地の値段も下がるのです。これが①。

また自動運転は交通違反なんてしません。交通違反が減れば、結果的に国に納付される反則金も減る。反則金は各地の道路インフラ整備の原資なので、つまり整備予算が目減りして道路インフラの質も下がってしまう。これが②。

また完全な自動運転ですからね、犯罪者がハッキングすれば遠隔操作も可能。深夜、自宅に停めていた無人の車が勝手にエンジンスタート、港に向かって走り出すような事件も起きかねないワケです。そんな時代に必要とされるのは、頑丈な「ガレージ門扉」やセンサー付きの「タイヤロック」。大切なマイカーはガッチリ守ろう。これが③です。

これみんなDX。なんだ、暗い話ばっかりだな、と思われるかもしれませんが、商業地の土地が安くなれば、新たなビジネスチャンスだって生まれるし、インフラ整備の予算が減れば、それを安価に実現する為の技術開発機運も高まる。また自動車盗難を防止する機器、商品ニーズも拡大するワケです。

「デジタル」が生み出した変化、新たな課題に「デジタル」で立ち向かい「デジタル」で乗り越えていく、そして最終的に世の中に良い変化を起こす。これが本来のDXなのです(と私は理解しています)。

実際のところ、DXの定義って企業によってもバラバラだし、専門家もその領域や属性によって言っていることが違ってたりします。皆さん売りたいモノが違う、自分の得意分野に引っ張ってきたい気持ちもある、だからまあ仕方ないんですが、とりあえずサーバの刷新やツール導入が本筋じゃないのは間違いないでしょう。大事ですけどね。

DX時代に成功するのは、風が吹けば桶屋が儲かる的な大局的な視点を持ち、先を読むセンスがある人なんだと思っています。

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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