訪ねてきたのは、いずみさんの息子が上がる予定の小学校に子どもが在学中だという女性だった。聞けば、現子供会役員だという。
「お宅は来年入学ですよね、といきなり言われました。で、畳みかけるように『小学校入学と同時に子供会に入会するのがならわしになっている』と。会費は年2400円。寝耳に水でした」
突然訪れた役員から、子供会に関する説明をされたいずみさん。
「え、待って待ってという感じ(苦笑)。秋祭りの2ヵ月前から毎週土曜日の夜に神輿の扱いとかお囃子の練習があるから、役員は毎回、非役員も場合によってはお手伝いがあると。会計やお菓子の準備、当日の男衆と子供たちの食事の世話、それらもすべてこの地域の小中学生の母親たちでやるんだと。なんだそれ、と思って唖然としました」
地域は組が分かれており、役割は分業するものの、最終的にはみんなで総力をあげてサポートすることになっている、との説明を受けた。
「しかも、子供会は秋祭りだけではなく、春はお花見バーベキュー、夏は花火、冬はクリスマス会などなど季節ごとにイベントがあって、コロナで休んでいた行事も復活させていくと言うんです。うちは秋祭りに遊びに行かせてもらったことしかなかったので、そんなに多くの行事があるとは知りませんでした」
季節のイベント以外にも、映画の上映会を主催したり、老人会とのコラボ企画があったりと、親子ともども何かと駆り出されるのだという。
「ふと気になって、子供会の入会は義務なんですか、と訊ねると『任意です』とおっしゃるんです。だから、『夫と相談するのでお時間ください』と答えたんですね。そうしたら『は? 即決しないわけ?』みたいな顔をされて、少し怖くなりました」
連絡先を教えてその場は引き取ってもらい、夫婦で相談することにしたいずみさん。帰宅した夫は「任意なら断ろうぜ、ウザいじゃん」と一刀両断だった。
「『断ったりして村八分とかないよね』と私が言うと、『いつの時代の話してんだよ』と夫に笑われました」
しかし、その地域の現実は「村八分」さえ存在しかねない前時代的なものだった。
いずみさんは秋祭りの現場で母親たちに囲まれ、子供会入会を強く求められることになる。
Text:中小林 亜紀