「今現在は、受験生が記入した願書と検定料の払い込み証明書を高校がとりまとめて、大学入試センターに送付しています。
その後の確認や修正なんかも、何かが起きるたびに郵送で行わないといけないので、われわれ教員の負担だけではなくて、生徒自身の負担も大きいと思います。
もうすでに、国公立大学や私立大学の一般選抜では、試験の9割以上が電子出願を導入しているので、共通テストに対する電子出願の導入は、遅すぎると思いますけど……。
まあ、50万人ほどが受験する共通テストですから、システムの安全性や安定性が求められるのは当然ですし、実現に時間がかかってしまったのも仕方のないことなのかもしれませんね」
彼女は教員になってから2度ほど受験生の担任を経験し、共通テスト出願の時期に、寿命の縮むような思いを何度も味わったそうだ。
「私ではありませんが、私の隣の席に座っておられた先生が、生徒から預かった願書をなくしたことがありました。でもそれも本当にその先生がなくされたのか、その受験生がなくしてしまったのかが本当はよく分からない状態で……」
美咲さんによると、彼女の隣に座っていた先生は、ある一人の生徒が願書を提出してこないので、「早く提出するように」と何度も促し、それでも提出してこないので、他の受験生の分を先に大学入試センターに送付したそうだ。
しかし、4度目か5度目の催促をする先生に向かってその生徒は、
「先生に渡した」
と言い始めたのだとか。
「私は隣で見ていたので、その生徒は提出していなかったと思いました。
もちろん私が席を外しているときに提出した可能性はありますけど、大事な願書でしょう? 誰も大人がいないときに、先生の席に何も言わずに置いていくということも考えられませんよねえ。
私の隣の席の先生も、『手渡された覚えはない』って言うし……。ですが大学入試センターから送られる受験票の中にその生徒のものはなかったので、どちらがなくしたかはともかくその先生はすぐに再発行手続きをしました」
受験票を紛失または汚損、破損した場合、再発行することは可能だ。美咲さんの隣に座っていた先生は、慌てて再発行手続きをして、その生徒が受験できる状態にしたそうだ。
「受験票再発行等申請書というものが存在するので、必要事項を記入し大学入試センター事業第1課まで郵送で提出するんです。とにかくその再発行手続きで、問題解決だとみんな思っていました」