自分では絶対に認めない。そこが悲しい…
厚生労働省は2024年、家族を介護する若者「ヤングケアラー」への支援強化に乗り出すと発表した。厚労省がヤングケアラーの支援を基本指針で示すのは初めてのことだが、少子高齢化の波は、明らかに子供たちを直撃している。
「ちょうど中学生くらいの子どもがいるお家で、祖父母の『介護問題』が持ち上がります。でも、今の時代はたいてい両親そろってバリバリ働いているので、『家にいるあんたが、おじいちゃんやおばあちゃんの面倒を見なさいよ』ということになるのです」
そう話すのは、東北地方の公立中学校で働く康子さん(仮名)30歳だ。彼女は、自分が中学生だった頃の「お手伝い」と、「ヤングケアラーでは?」と懸念される子どもたちのしていることに、大きな隔たりがあると感じている。
「ヤングケアラー」というのは、「本来なら大人がするものだと考えられている家事や介護、育児などを日常的に行っている子ども」のことを指す。この定義がかなりあいまいなので、「日常的」とはどのくらいか、「本来なら大人がするものだと考えられている」ことってどれなのかという判断が難しい。そして、ヤングケアラーではないかと思われる子どもたちの多くが、「ヤングケアラー」と呼ばれることを拒否し、保護や支援を受け入れようとしないと言うのだ。
「私は今、中学2年生の30人を担任しているのですが、2人、ヤングケアラーなのではないかと考えている生徒がいます。一人はA君という男子生徒で、思春期の男の子なのにご家庭で介護しているおばあさんのおむつを替えたり、お風呂に入れたりしているんです。
お母さんは、おばあさんの食事は作らないので、おばあさんが食べられる介護食を作っているのはA君です。面談や普段の会話の中で、ごく当たり前のようにA君がそんな話をするので、私もついうっかり本人に、『おばあさんの世話はすべてA君がしているの?お母さんは、何もしないの?』と言ってしまって…。それが詰問っぽく聞こえて傷ついたのか、A君はその日からぴたりと自分の日常生活について話さなくなりました」
康子さんは、そう言ってため息をついた。A君が介護しているのは父親の母だそうで、『義理の母だから』という理由でA君の母は、介護を放棄しているのかもしれない。
A君の話や、彼の友人の話から周辺情報を得た康子さんは、後悔とともに言った。
「父親と母親が、おばあさんの介護をめぐってもめた挙句、母親がA君にその介護を押し付けたというのがA君の置かれている状態の概要です。A君はそのご褒美としてスマホを与えられたみたいだって彼の友人が言っていました。スマホを買ってもらったからというだけの理由で、一切の介護を負ってしまう浅はかさは、中学生だから仕方がないんですけど、辛いはずの状況を隠し通そうとする理由が、私にはわかりませんでした」
☆スマホ欲しさに、おしん顔負けの苦しい日常生活を強いられているA君。答えを見失った康子さんがカウンセラーに相談すると、衝撃の事実が明らかになった。次回ではさらに詳しく、別の少女を含む、「無自覚ヤングケアラーたちの実態」をレポートする☆