近ごろ女性の月経に関する話題をメディアで目にする機会が増えたのは良いことだろう。
女性男性それぞれに特有の体の事情や悩みは、もちろん立場や性別に関係なく広く理解されるべきである。
厚労省では、女性従業員の月経による不調に対するサポート体制の整備を促すとともに、男性管理職のみならず、男性従業員にも 女性特有の健康課題を学ぶ研修を開催するよう呼びかけている。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menstruation.html
しかし、一方で「今日は生理で体調が悪い」ということを男性の上司や担当教員に伝えるのは、女性にとってたやすいことではない。パートナーには言えても、職場の人や学校の先生などに伝えるのは気が引けるという女性は多いのではないだろうか。
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この件について、ある声が寄せられた。現在小学6年生の娘の男性担任教師に対し、娘の体の状態について説明することに違和感を持つ母親からだ。彼女は藤田靖子さん(仮名)。詳しくお話を聞いた。
「娘は小学4年生の冬、学校で初潮を迎えたんです。私、自分は中学1年で来たものですから、まだまだかなとのんびり構えていたので、連絡を受けて慌ててしまったのですが、その時の担任は女の先生で、保健室の先生と連携して、スムーズに対応していただきました」
娘に生理痛が見られるようになってからも、女性教員とならばうまく連携が取れたという。
「娘は生理痛が徐々にひどくなっていったんですが、5年の時も女性担任だったので、体育を休みたいとか、保健室で横になりたいとか、気軽に相談できたんですね」
担任から靖子さんに電話がかかってきて、一度受診しても良いかもしれないという助言も受けた。
「その時の女性担任はご自身も生理痛がひどいとおっしゃり、親身に対応してくださいました。
先生からアドバイスを受けるまでは娘に受診させることまでは考えておらず、ジュニア向けの市販薬を服用させていましたが、それを機に専門外来にかかるようになったんです。先生には何かと助けていただきました」
ところが、あることをきっかけに、親娘と担任教師との連携はうまくいかなくなった。そのきっかけとは6年生への進級。担任教師が20代の男性教諭に決まったことだった。
「若い男の先生が担任になったと聞いて、まず頭に思い浮かんだのは、『あ、娘の生理の相談ができないな、困ったわ』という不安です」
娘の月経量が多い時や生理痛がひどい時の対処をどうしようか、靖子さんはまずそこを悩んだという。これまでは女性担任だったため、連絡帳や電話連絡を通じて気軽に意思疎通が図れた。
「男の先生が担任になった以上、体育の授業を見学させてやってほしいなどの連絡を、そのままの言葉で伝えることがためらわれるんです。言いたくない理由は、理屈じゃありません。先生の生理に対しての知識が浅いとか深いとかの問題じゃないんです」
小学校の教員たるもの、もちろん女性の体の事情くらい理解しているであろうことは靖子さんもわかっている。一方で、男性から「いま、この子は生理中なんだな」と思われること自体が不快だという気持ちは抑えることができないのだそう。
「娘が良ければそれでいいと思うので、彼女の意思も確認しましたが、やはり男の先生には知られたくないというんです。
生理痛がひどくて体育を休ませてほしいと言えば、今生理中ですとお教えしていることになります。娘は先生に、生理があること自体を知られたくないと言うんですね。お腹が痛いと言えばいいわよね、と言っても、娘は悟られるから嫌だといいます」
小学校6年生の前半期では、すでに初潮を迎えている子とまだこれからという子が分かれる時期だろう。靖子さんの娘は、あらゆる男性に対して、生理があることとか生理中であることを知られたくないと言うのだそう。
「夫は、自意識過剰だというんですが、たとえ自意識過剰であってもイヤなものはイヤですよね」
靖子さんの娘は男性が担任になったとたん、生理痛がつらい時でも体育の授業に無理に参加するようになった。
☆進級して担任が若い男性教員に。悩む母親、葛藤する娘。複雑な心情を後編で詳報する。☆
取材/文 中小林 亜紀