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翔ンデモ埼玉、水着撮影会中止で置き去りにされた「表現の自由と規制基準」

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

先週末からSNS界隈は「埼玉のアレ」をネタに激しい殴り合いが続いております。地元の共産党県議とその関係者が、県営プールを使った水着撮影イベントに対し、ワイセツだわ! 未成年もいる! ハレンチ! と県に「申し入れ」し、複数の撮影会が突如中止となった件。

イベント2日前に中止を告げられた団体もあったそうで、後付けの利用規約を盾にしたことや、これまでプール側の要請に全て従って運営してきた団体までもが利用を断られたことから、県に批判が殺到。

すると知事が態度を一転、「対応は誤りだった」と一部の中止判断を撤回。取りやめになったイベントの関係者は怒り心頭だろうし、おかげで私の記事も書き直し、深夜にニッコリ微笑んだのでした。

県議が「申し入れ」の根拠に挙げた法令(都市公園法第1条)の解釈を大きく誤っていた点、「申し入れ」とほぼ同タイミングでプールの利用規約が変更された点も相当な話ですが、なにより「わいせつの判断基準とは?」を聞かれた件の県議関係者が、

「セクハラになるから言えない」

と回答拒否した点もかなり痛々しく、要するに本件はツッコミどころ満載だったのですが……ほどなくSN S上では、

「なぜエロを擁護するのか」vs「エロの話じゃねえんだよ」

という壮絶な殴り合いが始まりました。

低俗なものは守らなくて良い?

中止容認派は、一部撮影会での過激なポーズや、モデルの中に未成年がいたことを理由に「公共施設にふさわしくない。低俗なものを守る必要はない」という主張を展開していたのですが、違法性が無いのに中止させるのは、それこそ違法であり、低俗って誰が判断したの? そもそも低俗なものは守らなくて良いなんて誰が決めたの? という話でもあります。

言うまでもなく、表現の自由は高尚なモノだけを守る為に存在しているのではなく、そもそも高尚か低俗かという曖昧なさじ加減で扱われるべきものでもありません。

10代前半のアイドル女子がミニスカートで踊り狂っても、未成年の男子タレントが「女性誌」の表紙で半裸になっても、違法性がないのなら、あとは好きか嫌いか私たちが選ぶだけ。見たくないからやめろ、低俗だから禁止、はダメなのです。表現の自由や多様性の原点はそこにあります。

ちなみに中高生の水着モデルが参加していることに対して「中高生の水着は即、児童ポルノに該当する」という投稿も見られましたが、もちろんそれだけでは法的要件を満たしません。確かに、中高生に群がるカメラマン達にはドン引きだし、「見てはいけない集団を見た」としか感じませんが……違法性の根拠もないまま、その集団に向かって「未成年がいるから撮影会を中止せよ!」「やめろ!」と叫んだところで、

「違法性もないのにナニ言ってるの? キ、キモいですね」

と言い返されて、非常に悔しい思いをするだけでしょう。

今回の話は、そのへんを「よく分かっていない人」が、公序良俗とか性の商品化といった曖昧な言いがかりで、

「私たちが決めます」

「私たちはジャッジできます」

「私たちの弾圧は正しい弾圧だから大丈夫」

と言いながら、結果的に表現の自由を殺しにかかっている、と言われても仕方のない案件なのです。自分で自分の首を絞める行為ですよ、それ。

状況を改善したいのなら、適切な手順・適切なルール設定・適切な移行措置が必要。公的な施設であれば、なおさら当たり前の話ですよね。

ちなみに今回、開催を中止させられた団体に対して、県が賠償金を支払う可能性が高いです、もちろん税金で。表現規制の片棒を担がされたうえに、無駄に税金が投入される可能性もある本件、我が故郷である埼玉のみなさんはもっと怒っていいのでは、と思います。

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。

 



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