彼が勤める会社は、県内を含めた4つの離島にも支所があり、人手不足のため一定の勤務年数がある社員は転勤しなければならなかった。
離島へは誰もが行けるわけではなく、選抜された社員が離島へ転勤し県内に帰ってくると出世コースを歩めるようになっている。
交際8年、同棲2年目を迎えるタイミングで彼の転勤が決まった由美さんは、これからの生活や結婚について深く考えるようになった。
仕事を辞めて島へついて行こうか――
しかし、今の職場は福利厚生が整っているため出産してママになっても働きやすい環境だ。
正社員で年に2回の賞与も安定しており、いま仕事を辞めて彼について行くと自分のキャリアが中断してしまう。
加えて、島暮らしをあまり魅力的に感じなかったことから遠距離恋愛することを選んだようだ。
「周りからは『絶対籍入れて転勤させたほうがいい』『ついて行ったらいいじゃん』『浮気する確率高くなっちゃうかもよ』などと言われてましたが、島には若い人がいないのでそこまで心配していませんでした。彼は釣りが趣味なので、すぐに釣りができる環境は最高と言っていたし、定時に仕事が終わるとランニングへ行き、毎日楽しそうにしていたようです」
ただ、彼の会社が所有する宿舎は男女共同だったため、若いメンバーで宅飲みをすることが多々あったようだ。
そのたびに喧嘩は耐えなかったが「島だし、こっちと比べて遊べるところもないし。仕方ないか」と彼を理解し我慢していた。
しかし島への転勤から1年が経った頃、長期連休で帰ってきた彼から突然の別れを告げられる。
「ごめん......別れてほしい。この家にある家具家電は由美にあげるから......」
3日前まで仲良くビデオ通話していた彼からの予想もしない発言に由美さんは驚きを隠せなかった。
泣きながら別れを告げてくる彼に対し、由美さんはこう放つ。
「ちょっと待って......この前まで普通に電話して仲良かったのに急に何?意味が分からないんだけど……!ちゃんと理由教えてよ!」
と言うと、彼の口から衝撃の事実を告げられる。
「実は、同じ支所の子を妊娠させてしまって......本当にごめん」
「え……?どういうこと?」
10年交際していて、結婚を考えていた彼から突然の別れ。その理由は、浮気相手を妊娠させてしまったからだと話す。
取材 文:錦城和佳