コンビニは日本社会を写す鑑と言われる。今回もコンビニで起きた事件簿をレポートする。
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田舎は都会ほど娯楽や遊び場があるわけではない。スマホやSNSが普及した今も、若者は東京に憧れたり住みたいと考えている人が大勢いるのが現状だ。そんな娯楽のない田舎の人々にとって、「お祭り」は特別なイベントである。田舎の若者たちはお祭りの時期が近づくと、意気揚々とする姿が目立つ。
大きな御輿を担ぎ、屋台が立ち並ぶ商店街の道通りは、大勢の人々で賑わう。知り合い同士が話に花を咲かせ、若いカップルがおしゃれをして歩いている。
田舎では珍しい光景なので、地方のケーブルテレビが撮影に来ており、若者たちがそれに写ろうと必死でアピールしている。血の気の多い若者は酒を飲んで暴れたり、ケンカに発展する事も珍しくないと言う。
今回はお祭りの日にコンビニで起きた事件について、シフトリーダーの永松里美さん(仮名・28歳)に話を聞くことができた。
永松さんはコンビニで働き始めて10年のベテランだ。
「その夜は地元のお祭りの日でした。すぐ近くの商店街と神社で行われるお祭りで、毎年この日はコンビニに来るお客さんが激増するんです。浴衣を着たお客さんで賑わい、夕方頃には店内はごったがえします。賑わうのは嬉しいですが、働く側としては憂鬱な一日ですね(笑)」
お祭りが始まる夕方頃から徐々にお客さんが増えだし、最後の花火が終わる21時頃に再び帰りの客が増えるという。この日は16時からシフトに入っていた永松さんも、数時間の勤務でもうヘトヘトになっていた。
事件が起きたのはその日の夜21時30分ごろだった。
「まだお祭りのお客さんがいる頃で、店内にはぼちぼち人がいました。それがだんだん少なくなってきた頃、突然1人のお客さんが、『ねぇ、トイレ燃えてるよ!』と大声で叫んだんです」
まさかと思った永松さんがトイレを見に行くと、ドアの隙間から黒い煙がもくもくと立ち上がっていた。中では炎が燃えるのが見えていたという。
「今までこんな事無かったのでビックリしました。急いで消火器を探しましたが、トイレに消火器は設置されておらず。火災の起こりやすいフライヤー室にあるのを思い出して、急いで取りに行きました。消火器なんて始めだったので、とりあえず黄色いピンを抜いて噴射しようとしたら、急にトイレから『ボン!』と爆発音が聞こえたんです。怖くて泣きそうでしたが、勇気を出してトイレに向かって噴射しました」
永松さんは勢いで噴射したものの、狭い個室の煙の中で、火がちゃんと消えたのかわからなかったそうだ。別のスタッフが消防に連絡し、すぐに消防車が駆けつけることとなった。
「トイレのドアは燃えていませんが、トイレットペーパーや紙が燃えたのか、赤々とした灰が飛んで店内にまで舞い上がってきていました。店内に火はうつりませんでしたが、すぐ横は雑誌コーナー。燃えカスから燃え移りそうだったので、雑誌コーナーをまるごとトイレから遠ざけました。火は消えていたようなので、お客さんもみんな手伝ってくれました」
お祭りで人の多い中で、コンビニに駆けつける消防車。店の前には何事かと人だかりができ、野次馬がたくさん集まったという。当然オーナーや店長のもとにも連絡がいき、すぐに店に駆けつけた。
「幸い大事には至らなかったですが、下手したら店が全焼していた可能性もありました。でもフライヤー室から火災が発生するのは考えられるんですが、トイレから火災が発生することは考えられません。誰かの仕業による放火事件の可能性が高く、警察に連絡して調べてもらうことになりました」
そして捕らわれた犯人は、「祭りでテンションが上がった高校生2人組」だったという。次回、コンビニ放火魔の意外すぎる動機を詳細にレポートする。
TEXT:鮫島佑樹