高校生向け地理の教科書「新高等地図」に1200を超えるミスがあったことに注目が集まっているが、その事件について、AIなどの技術の発展に伴って「人間」の能力が低下しているのではという疑惑が生じている。
「コロナ禍で在宅ワークをしていたので校正が行き届かなかった。」というのが出版社である東京書籍の見解であるが、その道のプロならすぐに気付くだろうミスも、そこには含まれているのだ。
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「便利なのでしょうけど、調べたら何でも出てくるので自分で考えなくはなっていますよね。それは、生徒だけではなく若手の教員もです」
そう話すのは康子さん(53)だ。彼女は長らく高校の数学の教員として働いているが、子どもたちの能力だけでなく、教員となった大人の能力低下についても痛感している。
「昨年教員になったばかりの先生がいるんですが、生徒が『学校に来たくない。』と彼に相談して来たら、その生徒の目の前でインターネットに『生徒に学校に来たくないと言われたら?』と入力して、出た答えを生徒に向かって読み上げていました。
冗談でやっているのかなと思いましたが、どうやら本気だったようです。『子どもが相談に来ているのにふざけて対応してはいけない。』と年配の先生が注意すると彼は、『ふざけていません!どうすればいいかわからないから調べることの何が悪いのですか?』と逆ギレしていました。みんなもう呆れちゃって何も言いませんでしたけど……」
康子さんは苦笑いする。結局生徒の方が、「先生が当てにならないから自分が頑張る」と言い出して事なきを得たそうだ。
先生本人がいくら正気であったとしても、目が点になりそうな話である。しかし、康子さんが目にした小説より奇なりな現実はこれだけではなかった。
「コロナ禍によるオンライン授業が始まって以降、タブレットを生徒に持たせて授業をしていいということになった学校が多くて、うちの学校もそうなりました。
また、教員もタブレットを利用して授業をしていいというより、タブレットを使って授業することを推奨すると言われました。
どう利用すべきかをみんなよくよく考えて、工夫を凝らしましたけど、ある30代の数学の先生は、自分の教えるべき範囲の内容について予備校講師が授業している動画を流してスクリーンに映しました。そして自分では授業をしなくなったのです。
毎時間毎時間予備校講師の動画を流して終わりの挨拶だけをして帰っていくので生徒から『家で動画を見ているのと同じだ。』っていうクレームがたくさん出てきました。
それはいけないということでまた年配の先生方や教頭がその先生に注意したんですけど、『自分よりわかりやすい授業をしている動画だから、自分が授業をするよりも意義がある。』そう言って平然としているのです。さすがにみんなが呆れてましたね」
こちらは教頭が何度も授業の様子を見に行って注意し続けて、『50分の授業時間中10分程度動画を見せるのであればいいけれど、50分ずっと動画を見せ続けることは禁止だ』というルールができたそうだ。
「動画に関しては、まったく学習内容に関係のない動画を流す教員もいて、結構よく問題になりました。自分が好きだと思っている洋楽や映画を見せる教員もいて、タブレットの扱いについては、子どもたちよりも教員の方が問題を起こすなんてことをおっしゃる先生方もいたくらいです」
康子さんの嘆きは止まらない。☆次回では、図書館の本をウラ流しするなど、信じられないほど低下した教員の質をさらに詳しくレポートする。反面教師として読み進めて欲しい☆
ライター 八幡那由多