インフルエンサーが恐れる「ステマ規制」とは?
波瀾の2022年が終わり、あっという間に新年を迎えましたが、実は昨年末、一部のSNSインフルエンサーたちをザワつかせる出来事がありまして……。12月27日、消費者庁の有識者検討会が「もうステマは禁止しようぜ」という内容の報告書を提出。ステマは今後、法律で明確に規制される方向で話が進むようです。
ここで言う「一部の」インフルエンサーとは、SNSで「美容効果のありそうなシャワーヘッド」をウキウキ紹介し(てコッソリ報酬を得)たり、「爆速でスリムになれるエステ」を紹介し(つつ、裏で報酬を得)ている人たちのこと。お金を貰って商品・サービスを宣伝しているんだけど、そこは内緒。つまりステルスマーケティング(クチコミを装った広告=ステマ)でご飯を食べている方々です。
ステマ自体は(少なくとも現在の日本では)違法ではありません。ステマ行為に法的な規制はナシ。いや、過去に摘発されたステマ事例があるだろ、と思われるかもしれませんが、それらはいずれも、インフルエンサーが勢い余って「景表法」を乗り越えて宣伝(※1)したり、「薬機法」を突き破って宣伝(※2)した結果、当局から刺されちゃったケースです。
※1 サプリを飲むだけで最速で美乳に!みたいな広告表現。優良誤認の恐れあり
※2 肌が白くなる!毛穴が消える!などの広告表現。薬機法で厳しく規制
つまりは「広告表現やその内容」に対する摘発であり、ステマ行為自体はお咎めなしでした。それが今回の報告書では、「内容以前に、そもそも広告案件で『広告だ』と明記していなかったらアウトね」とステマ禁止を明確に謳っています。ちなみにこれはネットに限った話ではなく、新聞やテレビなどもステマ規制の対象だそうです。
消費者の適切な判断、合理的な消費行動を阻害するステマは規制すべし。実際その通りでしょう。法律が変われば、今後は「広告」「PR」「宣伝」と書かれた投稿を目にする機会が増えるかも。でも……ネットのステマ、もうやめませんか? だってネットで仕掛けるステマって、驚くほど「バレる」んですよ。
ネットはステマに向いてない
以前「あるアニメ映画」が公開された際、SNSには映画を観た感想が数多く投稿されました。話題作だったから当然でしょう。そしてなぜかSNSで活躍する複数のマンガ家たちも、映画の内容や感想をそれぞれマンガに描いて、一斉に投稿し始めたのです。ん??
マンガの内容はどれも映画を観に行きたくなるような構成。しかもどのマンガも、同じ日のほぼ同じ時刻に一斉に投稿されるという益荒男ぶり。ちなみにそれらの投稿、個別に見れば「ああ、マンガで描きたくなるほど面白かったのね」と思わせる自然な内容でしたが、残念ながらネットって、情報を漏れなく「集めて」「並べて」「比較する」のがとっても得意なんですよね。つまりステマがバレやすい。
たった一人でも「これ広告案件じゃね?」と違和感を覚えてれば、あとは時間の問題。ネット上で似たようなマンガ投稿が探し出され、並べて比較され、「これは映画会社がマンガ家たちに依頼したステマ案件ですわ」と騒ぎになりました。その騒ぎをメディアが報じ、映画会社からは「手違いでPRと付け忘れた」というお詫びコメントが出され、まあ実際そうなのかもしれませんが、広報施策としては完全なる失敗でしょう。だって意図的だろうが手違いだろうが、ネタがバレた手品ほどダサいものはないですから。
実は2021年の東京オリンピックでも、ボランティア応募に前向きな複数のSNS投稿が「個人を装ったステマでは?」と話題になりました。ネットのステマは成功率も読めないし、とにかくバレやすい。しかもバレた時のダメージは爆裂的で、その企業やサービスに相当ダサい爪痕を残すのです。
そんなリスキーな施策だと分かったうえで、それでもステマ、やりますかね。
Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。