※この記事は取材を元に構成していますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しています。あらかじめご了承ください。
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次の日、13時の待ち合わせの5分前に指定されたカフェについた愛子は、ふくよかな恭子の姿をすぐ見つけることが出来た。他に日本人と思しき女性が3人いる。
「みんなに紹介するわね。この愛くるしい子が、最近バンコクに越してきた愛子ちゃん」
一同、愛子の顔を見て、笑顔を振りまいてくれる。
よかった。みんな良い人そうだ。宏がマイナス思考のことばかり言うから、少し気張っちゃったじゃないの。
「愛子ちゃん、駐在は何回目?」
「初めてなんです。それどころか、海外自体も初めてで……」
「あらー。それなら不安なことも多いわよね。まだ子どもも小さいし、何か助けが欲しい時は遠慮なく言ってね」
よかった。みんな優しい。
©︎gettyimages
「ところで、ご主人はどこの企業なの?」
「〇〇サービスというところで、メーカーです」
「〇〇サービス? みんな、聞いたことある?」
一同、首をかしげる。
「小さなところなので……事務所も主人ともう一人の、合計二人だけらしいですし」
「恭子のところは××商事の部長さんなんだよねー」
「そういうあなたのとこだって、△△物産のマネージャーさんでしょう!」
「愛子さんのところは?」
「うちはまだ若いので、課長職です(笑)」
「いやだわー若いなんて! どうせうちらはアラフォーですよ‼︎」
気分を害してしまったか?
「愛子さんはどこに住んでいるの?」
「トンローの駅から少し歩いたとこで……」
「トンロー? じゃあ、ここらかタクシーですぐじゃない? ねぇ、皆さんでお邪魔してもいいかしら?」
え? 今から? まだ座って10分も経ってないのに……。
「そうしましょうよ! ねえ、愛子さん、ご主人もお仕事だし、いいわよね?」