若い人にはどんどん店に来てもらって、洋服の歴史を深掘りしてほしい!
世の中には、「この店、沼だな」と唸るほど魅力的な店がある。
ヴィンテージ洋服に関し、日本屈指の知識と教養を持つ、ファッションディレクター赤峰幸生氏とヴィンテージ服のお宝を探り当てるお宝探し隊。
ドクトルが「高円寺のアネモネとは違う目線からの発見がある」と訪れたのは、渋谷区富ヶ谷にある『AWASE(アワセ)』。「この店はパパッと選べて、すぐトータルコーディネートが楽しめる」と、今回はフィッティングルームが大活躍!
オーナーの佐藤弘幸さん曰く「私が飽きない店にしたい」
アワセのオーナーの佐藤弘幸さん
『AWASE(アワセ)』があるロケーションは、大人が集うホットスポットとしてすっかり人気が定着した奥渋谷(通称オクシブ)。店の前はバス通りで、平日でもたくさんの人が行き交っています。
――オーナーの佐藤さんはどうしてこのロケーションを選んだんですか。
佐藤弘幸(以下、佐藤) 店をオープンして4年ほどになりますが、出店するにあたっていろんな街に行きましたが、この街の空気感に惹かれました。オクシブとしてブームになってからは街の感じもガラッと変わって、美味しいお店も多くなり、土日には若い人が多くなりましたね。
――アワセの商品は佐藤さんが買い付けに行かれているんですね。
佐藤 今はコロナの影響で行けませんが、イギリス・フランス・ドイツ・イタリアなど主にヨーロッパへ買い付けに行っています。セレクトの基準は、ヴィンテージの持つ普遍的な価値を大切にしながら、時代に合わせて好みが代わるのを意識して、それに合うモノを探してきています。デッドストックも含めてコンディションにはこだわっていますが、いろんな人に着て欲しいのと、私が飽きない店にしたいので、コンセプトは決めていません。
――なるほど。なぜヨーロッパがメインなんですか。
佐藤 個人的にはアメリカモノも好きで、フィッシングベストなどもありますが、ヨーロッパはクラシックが土台になっているので、パターンが凝っていたり、着やすかったり、着たときにシルエットがきれいなので気に入っています。メンズとウィメンズの両方を置いているのは、カップルやご夫婦など2人で楽しんでいただける店にしたいからですね。
若い頃に陶芸をしていたという佐藤さんと意気投合!
――赤峰さんと佐藤さんの出会いはいつですか。
赤峰 3年ほど前に、赤坂のアークヒルズでの「赤坂蚤の市」に佐藤さんが出店していて、話をしたのが最初。佐藤さんが若い頃に陶芸をしていたというのを聞いて、面白い男だなと思ったんだよね。
――赤峰さんから見てアワセはどういう店ですか。
赤峰 高円寺のアネモネの品揃えは王道クラシックだけど、アワセはアネモネとは違う目線での発見があるよね。佐藤さんの着こなしを見ればわかるけど、こなれたミックス感がある。「アワセは、こういう洋服と出合えるんだな」というのが彼の着こなしから分かるよね。
――佐藤さんは赤峰さんの着こなしはどう見ていますか。
佐藤 赤峰さんと知り合いになってから、梶が谷にある「めだか荘」にうちのスタッフを全員連れて行っています。貴重な書籍や赤峰さんのコレクションを見て、いろいろ感じ取ってほしいし、赤峰さんのスピリットにも触れてほしいからです。私もスタッフも赤峰さんのインスタを見て、赤峰さん流の“色被(かぶ)し”を参考にしていますよ。
赤峰 はい、着替えましたよ。テーマは「カーキグラデーション」だね。
コート8690円、シャツ1万5400円、ポロシャツ7920円、パンツ1万780円、靴3万1900円/アワセ
佐藤 グリーンのポロシャツはフレンチラコステで、シャツはシルクに定評のあるフランスのブランドEQUIPMENTのシルクシャツ、パンツはフランスの60年代のポリエステルコットンのデッドストック、コートは80年代のフランス軍のパッカブルナイロンコートで、これもデッドストックです。靴はイギリスのBarkerというブランドのものですね。
――この連載が始まって、初めてのトータルコーディネートですね。
赤峰 薄いベージュのエクリュとグリーンの“色被し”だね。古着屋へ行くと、たいていは単品を探すと思うけど、アワセはこうして全身選べるのが良いよね。
アワセで売れているモノと、ヴィンテージブームの実感
――最近よく売れているモノを教えてください。
佐藤 今年の夏は“フレラコ=フレンチラコステ”がよく売れています。この2年ほど好調ですが、FORZA STYLEの赤峰さんの動画の反響なども大きいですね。夏のオススメはイギリスのレジャーシャツやサマーシャツで、梅雨前の暑かったときに一気に売れました。
――レジャーシャツって何ですか。
佐藤 アメリカでいうアロハ的なシャツで、夏に一枚で着て映える色柄のシャツのことです。ヨーロッパは比較的シンプルなモノが多いんですが、色柄のキレイなシャツを買い付けています。
【アワセスタッフの夏のオススメ】左/70年代のイギリスのニットポロシャツ1万6500円、右/60年代のイギリスのコットンレジャーシャツ1万9800円
――ちょっとレトロ風味もあって、コーディネートに使えそうです。
佐藤 あと、個人的に好きなのがフランスのサファリシャツですね。サファリシャツは長袖だとユニフォーム感が強いんですが、半袖だとカジュアルなサファリルックが楽しめます。レジャーシャツとの相性も良いですよ。
【アワセスタッフの夏のオススメ】左/50~60年代のフランスのコットンサファリシャツ2万3100円、60年代のイギリスのコットンレジャーシャツ1万8700円、右/70年代のフランスのサファリシャツ1万5400円
――この連載のテーマでもありますが、ヴィンテージブームは感じていますか。
佐藤 店頭にいると、若い人が中心ですが、古着を求める分母は大きくなっているのは感じます。
――ブームの原因・要因は何だと思いますか。
佐藤 女性のお客様と話をすると、「どこに行っても同じようなモノしかなくて、古着屋のほうが面白いものが見つかる」という声はよく聞きますね。
赤峰流のヴィンテージショップの楽しみ方とは
――この連載でいくつかのヴィンテージショップを紹介していますが、赤峰さんの「古着屋の楽しみ方」を教えてください。
赤峰 例えば、洋服店は料理店と同じで、「4品の料理を10分以内で出せる(コーディネートできる)」のが良い。ファッションレベルが高い人はそれがパッとできるけど、佐藤さんの店は若い人を上手に導いてあげることができるんですよ。そこが良い。
――具体的には?
赤峰 洋服店はすぐブランドを先に説明しようとするけど、本当は「スタイルをどう作るか」なんだよね。だから、お客さんの気持ちを高揚させるような品揃えが大事だし、今なら、夏の気分のリズムを品揃えで表現してほしい。
――だから、2つめのコーディネートは、夏らしくヨッティング・セーリングがテーマなんですね。
70年代のスウェーデン軍トラックジャケット1万2100円、70年代のフレッドペリーのポロシャツ7920円、70年代のイギリス軍コットンパンツ9790円、80年代のイタリア軍スニーカー8690円/アワセ
赤峰 そう。古着屋の仕入れは、料理屋のお品書きのイメージなんですよ。だから、佐藤さんの仕入れには醍醐味がありますよね。
佐藤 アワセという店名は、モノと人の出合い、人と人の出会い、時代を合わせるなどを意識して付けました。お客様のスタイリングに活かせるミックス感を意識して買い付けしていて、必ず試着して買ってくるのも、日本人が着られるサイズにこだわっているからです。
赤峰 コーディネートが楽しめる店はいつ行ってもいいものですよ。いくつスタイルを作れるかが大事で、季節の気分の表現も大事です。
AWASE(アワセ)
東京都渋谷区富ヶ谷1-14-15
Tel.03-6804-9606
営業時間: 13:00~20:00
不定休
オンラインストア
Photo:Shimpei Suzuki
Text:Makoto Kajii