私が特に気に入っている英国菓子に「ベイクウェル・タルト」というものがあります。パイ生地にラズベリーなどのジャムを塗って、アーモンドプードルで作ったフィリングを載せて焼いたお菓子です。
Bakewell Tartという綴りですが、よく焼いたからベイクウェルなのではなく、イングランドのほぼ中央、ダービシャーにあるベイクウェルという地名に由来しています。素朴な味わいで万人受けするお菓子だと思います。レシピも比較的簡単で、パイ生地の作り方は他のお菓子にも使えますので是非参考にしてみてください。
◆友人のお母さんにたらふく食べさせられたベイクウェル・タルト◆
イングランド北部出身の友人の実家へ遊びに行った時のこと。彼のお母さんはベイクウェル・タルトが大好きで(事前に知ってはいたのですが)、滞在した3日間、毎日デザートにベイクウェル・タルトが出されました。
仰天しながらも美味しく頂いたのですが、なんとお土産に1台持たせてくれたのです。それでも飽きずに食べられたのは、このお菓子の飽きの来ない味とお母さんの腕前なのでしょう。
◆カフェで食べる小さなベイクウェル・タルト◆
イングランド中西部、Great Malvern(グレート・マルヴァーン)という街のティールームで頂いた小さなベイクウェル・タルト
ティールームなどでは、食べたり持ち帰ったりしやすいように写真のような小さなタルトを提供している所もあります。グレート・マルヴァーンのカフェで頂いたこちらは、ラズベリーの種を取り除いてあり、しっとりしていてスムーズな食感にやや酸味が強めの印象的な味わい、クロテッドクリームと相性も抜群で大変美味しかったタルトです。
◆クラシックなベイクウェル・タルトの作り方◆
① ふるった薄力粉、砂糖、サイコロ状に切ったバターをボウルにいれ、パイブレンダー(芋を潰す際に使うマッシャーのようなもの)でバターを潰すように混ぜる。フードプロセッサーを使うことも可能。
② 氷水を数回にわけて①に注ぎ、生地をまとめる。
③ 打ち粉をして生地を軽くこね、円盤状に成形する。ラップをして30分冷蔵庫で寝かせる。この間にオーブンの予熱(180度)を始める。
④ 30分経ったら生地をめん棒で伸ばし、バター(分量外)を塗っておいた型に移す。はみ出した部分は少しだけ残して(焼成時に少し縮むため)カットしておく。
⑤ 生地にベーキングシートを敷き、ベーキングビーンズを載せる。ベーキングビーンズを載せることで均等に重さがかかり、縮みや膨らみを最小限に抑えられる。大豆や小豆などの豆でも代用可。この状態でオーブンで180度で15分焼く。
⑥ 15分経ったらベーキングシートとベーキングビーンズを取り除く。パイ生地の底面をフォークで刺し、空気の逃げ道を作る。そうすることで底面が平らに焼き上がる。この状態でオーブンへ戻して更に5分焼く。
⑦ フィリングを用意する。ボウルにバターと砂糖を入れ、ミキサーでクリーム状になるまで混ぜる。卵を2回にわけて割り入れ、その都度よく混ぜ合わせる。
⑧ ⑦にアーモンドプードルを加えてさらに混ぜる。
⑨ パイ生地が焼き上がったら、オーブンの温度はそのままでパイ生地をいったん取り出す。生地にラズベリージャムを塗り、その上から⑧を載せる。表面を平らに整え、アーモンドスライスで飾りつけしたらオーブンに戻し、180度で35〜40分焼く。
⑩ 焼き上がったら完全に冷ますか、粗熱を取って温かいままでも美味しく頂ける。
《材料》23cmのパイ型用
【パイ生地】
薄力粉 170g
バター 130g
砂糖 小さじ1
塩 小さじ1/2
【フィリング】
アーモンドプードル 125g
砂糖 125g
バター 125g
卵 2個
ラズベリージャム 100g
アーモンドスライス 適量
photos&text: Kohki Watanabe
◆渡邉耕希(わたなべ・こうき)◆
愛媛県出身の1992年生まれ。ロンドンの大学でクラシック音楽を学ぶ。現地でヴィンテージ・アイテムの魅力に取りつかれ、服や靴を中心にアイテムの歴史的背景まで探求するようになる。無類のスイーツ好きが高じて開設したYouTubeチャンネル「The Vintage Salon」にて料理や英国菓子作りを通して日本で実践できる英国的生活を発信している。