Cottage pie(コテージ・パイ)とは、牛ミンチと野菜を煮込んで作ったフィリングにマッシュポテトを載せてオーブンで焼いた料理で、18世紀に端を発する英国の代表的家庭料理です。家庭では家族や友人が集まった際に、メインディッシュとして出されることが多いです。またパブやティールームなどでも供され、広く親しまれています。
スパイスやスープ・ストックで煮込まれた濃厚なフィリングに、クリーミーなマッシュポテトとトッピングのチェダーチーズが食欲をそそります。
私がコテージ・パイのことを知ったのはかれこれ7、8年前のこと。英国を特集したテレビ番組でのことでした。当時はパイというとパイ皮に包まれたものしか知らず、驚きました。それと同時にマッシュポテトの方が簡単に作れそうだなと思い、作ってみたのでした。それ以来、家族からも好評であったため、もっとも頻繁に作っている料理でもあります。
英国に渡ってから牛肉をAle(エール=ビールの1種)で煮込むことでコクが出て、旨味が増すことを知りました。そこにヒントを得て、フィリングを煮込む際にエールを使うようになったのですが、次第に更なるコクや深みを目指して、Stout(スタウト=黒ビール)に変更しました。英国人の友人にも食べてもらいましたが、大変好評でした。
◆味つけには元祖ウースターソース◆
フィリングの味付けの仕上げに使うのが、ウースターソースの元祖ともいえる「Lea & Perrins(リーペリン)」のウースターシャーソース。酢や香味野菜を熟成させた芳醇なソースで、アンチョビが入っているなど、日本で出回っているウースターソースとはかなり違う印象です。カレーなどの煮込み料理の隠し味や、チーズトーストに2、3滴落とすと最高です。
◆時間はかかるが、喜ばれること間違いない。
極上コテージ・パイの作り方◆
1, 玉ねぎ、人参、セロリ、ニンニクををみじん切りにする。サイズは好みで加減してOK。同時進行でじゃがいもを茹でるため、鍋にお湯を沸かしておく。
2, 熱したフライパンにオリーブオイルをひき、みじん切りにしたニンニクを入れる。
3, 香りがたってきたら牛ミンチを入れ、塩胡椒をして色が変わるまで強火で炒める。
4, 牛肉をいったん皿に移し、同じフライパンに追加のオリーブオイルをひき、人参、玉ねぎ、セロリを入れ中火で炒める。
5, 野菜に火が通ったら牛肉をフライパンへ戻し、軽く混ぜ合わせる。
6, タイム、シナモンで香りをつけたら、コンソメと黒ビールをフライパンへ。ローリエを入れて汁気が飛ぶまで20〜30分煮込む。
7, 沸騰したお湯に、皮を剥いてカットしたじゃがいもを入れ、柔らかくなるまで煮る。
8, 6の汁気が飛んだら、火を止めてローリエを取り除き、トマトピューレとウースターソースで味を整える。→ パイ皿へ移す。
9, じゃがいもが柔らかくなったら湯をきり、もう1度20〜30秒ほど火にかけ水分を飛ばす。
10, 牛乳とバター、塩を加えてマッシャーでじゃがいもを潰す。滑らかになったら8のフィリングの上に満遍なくのせて平らにならす。
11, 仕上げにチェダーチーズをのせて、200℃に予熱したオーブンで20分ほど焼く。
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◆ラム肉がお好きな方には兄弟分のシェパーズ・パイもオススメ!◆
コテージ・パイはフィリングに牛ミンチを使う料理ですが、代わりにラム肉のミンチを使うのがShepherd’s pie(シェパーズ・パイ)です。
作り方は全く同じですが、シェパーズ・パイの場合は仕上げのチーズは省きます。またラムには黒ビールよりエールが合うように思うので、私はシェパーズパイの際はエールで煮込むようにしています。ラム肉は独特の匂いがあるので、臭み消しにも役立ちます。ラム肉がお好きな方にはぜひお試しになって欲しい料理です。
《材料》 4〜5人分
◆フィリング
・牛ミンチ 400g
・玉ねぎ 大1個
・人参 2本
・セロリ 1本
・野菜コンソメ 300ml
・黒ビール 500ml
・トマトピューレ 大さじ1
・ウースターソース 大さじ1
・塩 適量
・胡椒 適量
・タイム 小さじ2
・シナモン 小さじ1
・ローリエ 1枚
・オリーブオイル 適量
◆マッシュポテト
・じゃがいも 6個
・牛乳 100ml
・バター 大さじ1
・塩少々
・仕上げ用のチェダーチーズ 適量
photos&text: Kohki Watanabe
◆渡邉耕希(わたなべ・こうき)◆
愛媛県出身の1992年生まれ。ロンドンの大学でクラシック音楽を学ぶ。現地でヴィンテージ・アイテムの魅力に取りつかれ、服や靴を中心にアイテムの歴史的背景まで探求するようになる。無類のスイーツ好きが高じて開設したYouTubeチャンネル「The Vintage Salon」にて料理や英国菓子作りを通して日本で実践できる英国的生活を発信している。