レディスですが、オーバーサイズなので男性でも着られます!
さて、189回目も「エルメス」。いまは引退してしまったマルタン・マルジェラが、エルメスのレディス プレタポルテのデザインを任され、クリエイティブ・ディレクターを務めていた時代に発表したニットです。
寒さも本格的になってきて、ニットが恋しい。僕にとっては 嬉しい季節がやって参りました。
ネックが深く大きく開いた「ヴァルーズ」いうシリーズのアイテムで、シャツやジャケットなんかもリリースされてるんですが、こちらはシルク98%に2%だけナイロンが混紡されたニット。
品質表示タグにもあるように デリケートな素材なんですが、肌触りは抜群だし、暖かいし、他では得られないリッチさを味わえます。
「ヴァルーズ」は、マルタン・マルジェラ自身のブランドでもリリースしており、圧縮したウールの着丈が長いグレーニットと セロファンが貼り付けられたカーキのカーディガンを持っていますが、着心地は完全に別物。どちらも奥方に奪い取られましたが…(笑)。
ちなみに、マルタンがエルメスのプレタポルテをデザインするときに考えた"リュクス"の定義には「クオリティとコンフォートの完全なバランス」というのがあったそうで、自身のブランドとは異なる唯一無二な美しく上質な素材を使って、時代性を超越したフォルムを描く、シンプルなアイテムを提案し続けていました。
ただ、このシンプルさがネガティブに働いて顧客が飽きてしまい、売り上げが落ちることで退任に繋がったそうですが、個人的には もっと長く続けて欲しかった…。
これも もちろんレディスなんですが、女性がコンフォートに着られるようにとオーバーサイズで仕上げられているため、しっかりした体格の僕でも難なく着ることができます。
ネックが深く大きく開いている理由は、「女性が髪の乱れやメイクを気にせず、脱ぎ着ができるように」というマルタンのはからいで、かぶるだけでなく、肩を抜くように脱ぐこともできます。
当時を象徴するシンプルなタグには 星マークのスタンプが押されていますが、これはソルドで購入した証。さすがに、この時期にエルメスをバンバン買えるほどではなかったので、このニットは ある方が購入したものを譲って頂いたんですが、ほぼ新品でした!
華奢な日本の女性には少し大きかったのが幸いし、かなり安く僕の手元にやってきたのです。
2017年にはアントワープのモード美術館MOMUにて『マルタン・マルジェラ、エルメス時代』展が開催されたり、マルタン・マルジェラのドキュメンタリー映画『We Margiela』が上映されたのも手伝って、マルタン・マルジェラ時代のエルメスが再評価され、リアルに体験していなかった世代をも巻き込んで、セカンドハンドの価格がまた高騰しています。
それでも元値を考えれば、かなりお安いんですが、新たに手に入れるのは難しくなってきていますね。状態の良さなども含めて。
シンプルにTシャツの上に羽織っても様になるし、シャツでも良し。タートルネックを合わせてもバランスが良いので重宝するんですが、シルクという素材もあって、痛むのが怖くて そこまで頻繁には袖を通せないのが寂しい。
おそらくボロボロになってもオーラを発してくれるような気はするんですが、なかなか勇気が湧きません。どこかのマダムが着てないのを安く譲ってくれたりしませんかね?
Photo:Shimpei Suzuki(item)
Edit:Ryutaro Yanaka