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LIFESTYLE ここがヘンだよ日本のクルマ社会

食べモノはOKでも、ヒトは運べない”日本のUber”のナゾとは?「ここがヘンだよ日本のクルマ社会 第二回」

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日本はクルマ先進国だとされているが、果たして本当なのだろうか? 欧米がすべて正しいわけではもちろんないのだが、明らかに日本のクルマ社会でおかしいな~と思うことがあることも事実。というわけで、どこがヘンなのか、その解決策は?にジャーナリスト森口将之がお答えします。

UberのEatsロゴはよく見るけど、Taxiロゴは見たことある?

Uberをはばむ既得権益享受者たちとは?

日本は小さな国土ながら、多くのメーカーを擁する世界的な自動車大国である。が、世界と比べると自動車そのものや交通システムにガラパゴスな部分が多く見られる。

前回のコラムで書いたセグウェイや電動キックボードのように、日本では自由に使えないモビリティサービスに、同じアメリカ生まれのUber(社名はUber Technologies)に代表されるライドシェアがある。

ライドシェアはマイカーに他人を同乗させて「移動を共有する仕組み」で、移動の形態としてはタクシーに似ているが、専門資格を持つドライバーや専用車両は使わない。ライドシェアは、一般のドライバーが運転するマイカーと移動者を結び付けるアプリを提供するので、配車アプリとも呼ばれている。

この仕組みを「発明」したのが、2009年にサンフランシスコで創業したUberで、2018年12月のデータでは世界700都市以上で展開し、1日1400万回の配車サービスを提供しているという。

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ヒットの理由のひとつは使いやすさだ。事前準備はアプリをダウンロードし、クレジットカードなどの個人情報を登録するだけ。アプリを開くと現在地が表示されるので、行き先の名称や住所を入力すると、アプリに運賃とともにドライバーの名前、車種、ナンバープレートの文字が出るので、それを頼りに車両を見つけ乗ればいい。

アプリで目的地を指定しているので、ドライバーに行き先を告げなくても良く、運賃はおおむねタクシーより安価であるうえに、カードから引き落とされるので支払い行為がない。これらは外国で利用する際に助かる。

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日本では2014年、まず東京都内で試験的にハイヤー向けの配車サービスを始めると、翌年、福岡市で一般ドライバーを採用したテスト運用を開始する。つまりアメリカのUberと同じ方式だ。ところが国土交通省から、法律違反の恐れがあるとして運用中止の指導があった。

日本では旅客運送、つまり利用者から料金をもらってクルマで運ぶドライバーは、第二種免許を持っていなければならず、車両は営業用の緑ナンバーを付けていなければいけない。

この2つに違反していたのだ。

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その裏には、タクシー業界団体のライドシェアに対する強い反発があった。自分たちの仕事を奪われるという不安から、危険な白タク(自家用の白ナンバーを付けて営業するタクシー)という言葉を使い反対を始めていたのだ。ロビー活動も積極的であり、政府の発表にはライドシェアという言葉さえ目にしない状況になっている。

そこでUberは地方に目を向けた。地方では人口減少で鉄道やバスだけでなくタクシーでさえ撤退した場所がある。そういう場所で移動を支えるために、自家用有償旅客運送という制度がある。マイカーを使い一般ドライバーの運転で移動を支えるものだ。

この制度を使って導入したのは、京都府京丹後市の丹後町地区で、地元のNPOが主体となり、地域のドライバーがマイカーを使い、Uberのアプリで配車や決済を行う「ささえ合い交通」も導入した。ところが導入されたその日に、隣の2つの地区にタクシーが復活した。これ以上Uberの勢力拡大は許さないというタクシー業界団体の姿勢が出た形だ。

ヨーロッパでもUberはタクシー事業者からの反対に遭った。ただし日本の第2種免許に相当するライセンスを取得すれば、マイカーを使って旅客輸送してもいいという国も多くなっている。同じアプリでタクシーとライドシェアの両方を配車できる都市もある。

しかもライドシェア企業はUberだけではなく、中国DiDi(滴滴出行)、シンガポールGlab、インドOlaなど、世界各地で続々登場し展開が進んでいる。日本ではUberやDiDiを含めて、タクシー配車アプリとして提供しているが、ここまでサービスが限定されているのは日本ぐらいである。

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ところがそんな日本でも、フードデリバリーのUber Eatsは認められている。こちらは専用のライセンスや車両は必要ないし、そもそも昔から出前という文化があったことが大きいだろう。

このUber Eatsが最近、日本国内で一気に拡大している。昨年末時点で10都市展開だったのが、今年2月以降でさらに10都市追加した。3カ月で倍増しているのだ。理由はもちろん新型コロナウイルス感染拡大である。

外出自粛によって多くの飲食店が利用者減少に悩んでおり、個人経営の店はデリバリーのための人も車両もないところが多い。逆に利用者の側から見ると、外出自粛のために食べに行きたいが行けない人がいるし、それ以前に飲食店同様、収入が激減して新たな仕事を探している人もいる。

Uber Eatsはこうした思いをアプリでつなぐものだ。だから直近での展開拡大につながっているのだろう。

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Uber Eatsで料理の配達を依頼する飲食店は、1つの配達につき手数料を35%支払わなければいけない。配達員の報酬の出し方は複雑なので割愛するが、注文するほうもイートインに比べ割高になる場合が多い。それでも今の状況では価値あるサービスだから拡大が続いているのだろうし、仮に感染が収束したとしても、リモートワークはある程度は残るはずで、フードデリバリーは定着に向かうのではないかと思っている。

この流れでライドシェアも日本に定着してほしいものだが。

Text & Photos:Masayuki Moriguchi

森口将之プロフィール

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モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員などを歴任。著書に『Maas入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』(学芸出版社)など。



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