1990年代が気になるいまの気分にマッチ
トッズはグループの会長兼CEOのディエゴ・デッラ・ヴァッレさんの職人技とイタリアの伝統文化に対するこだわり、さらにさまざまな社会貢献活動を行う姿勢に感銘を受けることが多く、いつも注目しています。これまでブランドを象徴するドライビングシューズ「ゴンミーニ」をはじめ、いろんな靴を履いてきましたが、昨年の6月にミラノコレクション期間中に日本のプレス担当スタッフがこの真っ白なウイングチップを履いているのを目にして“こんなのがあるのか”と。帰国してすぐに表参道の旗艦店に走りました。
夏に履く“ホワイトシューズ”といえば、ウォークオーバー(現在は消滅)やブルックス ブラザーズの「ホワイトバックス」が有名ですが、あれはレンガソールのイメージが強過ぎるのとトラッドと切り離せない印象になってしまうんですよね。それが僕にはちょっと窮屈に感じてしまいまして……。
こちらのアッパーはカーフ製で、ソールまでオールホワイト。で、コバだけヌメ革っぽい仕上げにしているのが、何とも上品ですよね。しかもメダリオンを配したウイングチップというのも洒落ているじゃないですか。だって、もともと英国貴族がカントリーサイド(田園地方)の狩猟や散策の際に履く靴だったことから考えると、ホワイトってあり得ないですよね。
僕が最近、気になっているのが、ネイビーのワイドパンツにネイビーのTシャツ、それにジャケットを合わせるような往年のジョルジオ アルマーニを彷彿させるスタイル。そんなルックスにピッタリだと思ったんですよ。と言うのも一昨年、ミラノでジョルジオ アルマーニのランウェイショーを見て“これだ!”と。
少し前まではプラダの1990年代のスタイルが気になっていたんですが、それ以来、青春時代に憧れたアルマーニの雰囲気が自分のなかでリバイバルしたんです。当時の僕はビームスでのアルバイト生活を送っており、店で定期購読していた『L’UOMO VOGUE』などの洋雑誌を読みふけっていた時代でした。アルド・ファライが撮り下ろしたアルマーニのキャンペーンビジュアルがそれはもうカッコよくて。
僕はエンポリオ アルマーニのフォトTぐらいしか買えなかったんですが、あの頃のミラノ勢が放っていた都会的な香りに、いままたノックアウトされています。だから、足元にもこういう都会的なシューズが必要なんです。
Photo:Ikuo Kubota(owl)
Text:FORZA STYLE
エコラグ-Hoshipedia
「エコラグ」とは、エコノミック・ラグジュアリーの略。economic luxury。極めて経済的だが、上質さやエレガンスは失わないスタイルの意味。「多くの粗悪なものより少しの良い物を」という干場の哲学により生まれた造語。腕時計や靴・鞄、スーツのように長い年月使えるものは高額でも、白シャツや白無地のTシャツのように常に白いまま清潔に着たい消耗品は、高額なものよりもコストパフォーマンスを重視するというスタイル。パテック・フィリップの腕時計やジョン・ロブの靴と、カミチャニスタやデッコーロの白シャツ、GAPの白無地のTシャツは干場にとっては同じ。一点豪華主義とも違う。干場が敬愛するブルース・リー先生が提唱した無駄を排した最短の動き(エコノミック モーション)で相手を倒すジークンドーのように、経済的で盛り過ぎない、かつ無駄のないシンプルで上質なスタイルを指す。