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【衣食住の達人のアタマの中】 建築家、谷尻誠の偏愛家具

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拾い物から歴史的な傑作まで。気鋭の建築家が本当に惹かれるインテリアとは?

大人が何かを選ぶとき、そこには経験値とセンスの差が顕著に出る。そして、数ある選択肢の中から最良のものを見極め得る人のことを、周りは目利きと呼んだりするワケです。とは言え、その”最良”は決してひとつではなく、個性の数だけ存在するもの。ここでは、様々な分野の第一線を走り続ける人々の、“らしさ”溢れる選択にフォーカス。物事の本質を知るキーパーソンは何を想い、どこに惹かれるのでしょうか?

私的な住まい作りについて尋ねた前回に続き、後編ではそこに並ぶ家具とインテリアにフォーカス。一見無作為なそのセレクトから見えてきた、モノの真価とセンスの良さ。

谷尻誠(たにじりまこと)1974年生まれ、広島県出身。建築家。学生時代にデザインを専攻し、建設事務所を経て、2000年にSUPPOSE DESIGN OFFICEを設立。2014年より吉田愛と共同主宰。現在は東京と広島に去年を構え、活動を行っている。これまで「JCDデザインアワード」「グッドデザイン賞」などをはじめ、数々の受賞実績を持つ。

既存の価値観にとらわれない家具選び

ハイセンスなショップなども数多く手がけてきた谷尻さんだけに、高級家具への造詣の深さは言わずもがな。しかし、先に谷尻さんが語った通り、彼の自宅はと言うとそんな名品と拾い物の石が同列で扱われていて、そこに優劣はないようです。

谷尻:家具はなんだかんだ、オーダーして作ったものがほとんどなんですが、椅子に関しては既製品が多いです。

その視線を追ってダイニングに目を向けると、自身が設計したという木製天板・細い鉄脚のテーブルには、Jasper Morrison(ジャスパー・モリソン)やJean Prouvé(ジャン・プルーヴェ)といったデザイナーが手がけたもの、マルニ木工、無印良品がリプロダクトしたTHONET(トーネット)社の「NO.14」など、6脚の椅子が置かれています。

一脚も同じデザインではないのに違和感がなく、むしろ統一感すらあるのがなんとも心ニクい。テーブルの奥に置かれた木目基調のキャビネットは古道具屋で見つけたという掘り出し物で、約1万5000円という購入価格に驚かされます。

谷尻:実はこのキャビネットは、元々黒い塗装が施されていたんです。そこにサンドペーパーをかけて、全体をナチュラルな木材の色に戻したんです。

窓辺に置かれ、植物などを飾っている鉄製の台は工事現場で使われているH形鋼を切断して流用したもの。インダストリアルな質感が部屋の雰囲気によく似合います。その前に敷かれた巨大な座布団のような家具はリラックスしたいときに座るというソファ代わりのもので、オーダーで制作したのだそう。

谷尻:「素材はデニムです。岡山のデニムメーカーさんにお願いして、パッチワークで作ってもらいました」

なんだかんだ惹かれてしまう、数々の傑作プロダクト

型にはまらない谷尻さんの家具選び。そこには、既成概念やルールに捉われない、彼独自の審美眼が生きています。その一方で、当の本人は「やっぱり、名作と言われてる家具には優れたデザインが多いです」とつぶやく。

氏がはじめてお金を貯めて買ったという家具は、フィンランドを代表する建築家Alvar Aalto(アルヴァ・アアルト)がデザインしたテーブル。以来、谷尻さんは公私にわたり、世界中のグッドデザインと触れ合ってきました。

谷尻:「時代を超えて愛されるプロダクトには、それなりの理由がありますよね。僕もイームズの家具には、クリエイションの面ですごく影響を受けています」

20代の頃に谷尻さんがはじめて買ったCharles & Ray Eames(チャールズ&レイ・イームズ)夫妻のデザインによる家具が、今も使い続けているというHerman Miller(ハーマンミラー)社の「シェルチェア」。ミッドセンチュリー屈指の傑作「ラウンジチェア」も彼が“いつか買いたいです”と話すイームズのプロダクトのひとつ。

知名度や市場価値に捉われず、実用性や造形の美しさを追い求め、憧れやロマンを決して忘れずに本当に優れたプロダクトを見極める。なるほど、谷尻さん、“目利き”と呼ばれるワケですね。
 

Photo:SPhoto:Satoshi Ohmura(portrait)、Toshiyuki Yano(still)
Text:Rui Konno



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