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FASHION

【連載】先人に聞け! 第3回 メンズファッションディレクター赤峰幸生氏

2017.1.11
2017.1.11

ファッション界のレジェンドの“カッコいい”の原点

連載第3回では「美しさ」について聞いた「先人に聞け!」。ファッションに関する和洋書が整理されたアトリエで、赤峰幸生さんに「メンズウェアの魅力は?」と尋ねると、「文明とは発展していくもの、文化とは継承していくもの。今は日本が日本でなくなっていくことに対する危機感もあって、自分が学んできた“正しい歴史検証に基づいたクラシック”を元気でいられるうちは伝えていきたい。それからは、干場編集長のような世代がその文化を継承していってほしい」と答えます。

もらった映画雑誌を夢中でスクラップしていた高校時代
28年目にロンドンでビスポークした「ジョンロブ」。今でも「そのラスト(木型)いいですね」と誉められるそう

今回、タイトルに“カッコいい”とありますが、「格好」というのは、「そこそこの歳であるうってつけ」という意味です。若さには勢いがありますが、一定の年齢にならないと本質にはたどり着けません。男の40、50代は公私とも、格好を究めていかなければなりませんが、ひとつ大事なのは、気持ちはいつも30代であること。年齢というのは見た目の問題ではなく、心の持ちようなのです。

中学生のときに洋服に目覚めて、家が下宿屋をしていたので、下宿していた学生から読み終えた映画雑誌をもらって、格好良いコートの着こなしなど、自分が気に入った服を着ている写真をスクラップしていました。それを見て、コートの襟の立て方や、雨のときのダブルブレストの前身の返し方、タバコの持ち方などを真似て、やっていくと板に付いてきます。日比谷に旧帝国ホテルがあった頃は、レストランの窓越しに外人がナイフとフォークで食事しているのをのぞき見て、「魚は、ああやってナイフとフォークを使うんだ」とか、まさに生きた教科書でした。

小学生のときから絵を描くのが好きで、今でいうイラストですが、自分が描いた線で、造形的にモノを見ていくのが好きでした。桑沢デザイン研究所では、当時はバウハウス教育の仕組みの中で心理学や社会学を学んだり、舞台美術家の第一人者の朝倉摂さんや、グラフィックデザイン界の巨匠、亀倉雄策さんに直接教わったり。あと、高樹町に長沢節さん主宰のセツモードセミナーがあって、そこで本格的なイラストレーションを覚えました。

スクラップを見ながらよく模写はしていましたね。コートやジャケットのラペルを描いているうちに、良いバランスがわかってくる。「このコートは雰囲気あるよね」と一人で学んでいました。

映画監督を軸にして映画を観る、ファッションを識る
映画雑誌から切り抜かれたスクラップブック

今このスクラップ帳を見ても、懐かしさと同時に、クラシックの基本は普遍的だなと思います。自分が一番ファッションを学んだのは、映画館で観た数々の映画で、当時はビデオもDVDもありませんから、好きな映画は20~50回ぐらい観ました。数を重ねると主演俳優から脇役の着こなしまでしっかり焼き付いてきて、そのうちに監督を軸として映画を観るようになってくる。

というのも、イングリット・バーグマンやハンフリー・ボガードの着こなしは本当に素晴らしいけれど、それを意図した監督がすごいと興味を持ちだして、フェデリコ・フェリーニ、ロベルト・ロッセリーニ、ルキノ・ヴィスコンティ、ジョゼッペ・トルナトーレ、アルフレッド・ヒッチコック……、彼らの服の着こなしもまたカッコいい。渋い着方を極めているからこそ、役者にも指示できるんだなと。

日本人でも小津安二郎はグレーの服しか着ないことで有名で、白のシャツにグレーのパンツ、帽子をかぶってという監督のスタイルがある。そういう“ディレクターズ・スタイル”にも憧れるわけです。

赤峰さんが主宰するデザインカンパニー「INCONTRO(インコントロ)」アトリエにて

そうやって「カッコいいとは何だろう」ということを突き詰めていくと、ブランドの服を着ることではなく、心の中をどう格好つけるかに行き着いて、見た目は普通だけど心の中はカッコいい人は、生きるということに関する格好良さがある。

何かを食べて美味いか不味いかは一枚の舌で感じることですが、コンビニのものばっかり食べていると味がわからない。それは洋服にも言えることで、コンビニエントな服ばかり着ていると、自分がカッコいいのかどうかもわからなくなる。

何にもでも“良い塩梅”というものがあるわけです。腕の良い料理人がとったダシには、私たちが真似できない塩梅があって、「あぁ、日本人に生まれて良かった」と思う瞬間がある。服にも食べるものにも、あらゆるものに“道”があります。

戦後、日本にはアメリカからの強い“米砂”が吹き荒れた
1930年代から60年代後半までのフランスファッション黄金期に刊行された雑誌『ADAM
』や、1934年の『バーバリー』カタログなど希少な資料も所有

服の着こなしで“道”と言えば、スティーブ・ジョブズが黒のタートルとジーンズという同じ着こなししかしないことが成功者の理由という本が話題になったそうですが、日本でも1980年代のデザイナーキャラクター(DC)ブームのときに、黒しか着ないというブームがありました。

私に言わせると、黒しか着ないというのは、季節感や旬や時代を身体で感じることを拒否していることで、感性は損なわれます。ジョブズやマーク・ザッカーバーグなどIT時代の寵児も、Tシャツとジーンズという決まった格好では、やはり何かを損なっていたはずです。

そもそも日本人のDNAの中には洋装というものがありません。日本人には基本がないので、カジュアルといえばジャージの上下みたいになってしまいます。それもまた第二次世界大戦でアメリカに負けたことに起因していて、明治時代から戦後までは、芸術家や政治家は船で渡欧することが一般的で、戦前はヨーロッパの風が吹いていました。

それがアメリカに負けて、その風は断絶。戦後はアメリカ一辺倒で、洋服の着こなしについては、アメリカの60年代が急激に輸入され、中国からの風が黄砂なら、アメリカから洋服やカルチャー、食べものまで、強烈な“米砂”が吹き荒れました。

1920年代のフランスのネクタイの生地見本帳。「音楽家の同じCDを聴いていても、その時々で気に入る曲が変わるように、時代の中で生きる色柄も変わっていくけれど、基本は普遍」と赤峰さん

戦後、学校教育はもちろん、社会的にも政治的にも、そして文化的にも、アメリカに跪(ひざまず)いてきた日本。自由の国の代表のような顔をして、実は差別の国の代表で、さらに今また加速化していますが、トランプが就任する1月から注視しなければなりません。

日本人は本来デリケートで礼儀正しく、思いやりがあって、きめの細かい人種です。それがジョブズ的考え方=スマホに毒され、多くの人がスマホに拘束されている。画一化は日本人の特性でもありますが、日本人として大切なものは失わないようにしなければなりません。

【連載】先人に聞け! 第4回をお楽しみに。

Photo:Shimpei Suzuki
Text:Makoto Kajii

ジャパン・ジェントルマンズ・ラウンジ
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