香織さんは、大いにショックを受けた。
「驚きました。娘がそれほどまで追い詰められていたなんて……。そこで夫と話し合った結果、審美歯科が併設された美容外科での治療を考えました。娘は『一刻も早く治したい』と言うため、時間のかかるマウスピースではなく、高額なセラミック治療をしたんです。
150万円以上かかりましたが、コンプレックスから解放されて明るさを取り戻した娘を見て、ホッとひと安心」
真子さんは都内の名門女子校に進学した。成績は優秀でとりわけ理数系が得意だったため、担任の教師の勧めで、大学は有名私大の理工学部に進学。学部の男女比は「男性8割、女性2割」だ。
しかし、香織さんは表情を曇らせた。
「学業に専念してくれるのは嬉しいんですが、レポートに追われる日々で男っ気ゼロ。着るものも地味で、ほぼスッピン状態で通学です。サークルや合コンにも興味はないようですし、このままじゃ結婚できないんじゃないかと、さすがに焦りましたね」
香織さんの予想は的中した。レポートや論文執筆に明け暮れる真子さんは、マジメを絵にかいたような学生生活だ。恋愛などそっちのけで大学院に進むこととなった。
それをきっかけに、香織さんは大手結婚相談所「J」の加盟店で働きだした。香織さんは語る。
「登録料は160万円でしたが、娘のためなら安いと思いましたね。大手結婚相談所は全国にネットワークがあり、他店の会員の情報共有もできるんです。私は婚活カウンセラーや仲人をしながら、どのような女性の成婚率が高いか分析しました」
成婚率の高い女性とは、どのようなものか。
「まず大事なのは年齢。若ければ若いほど有利です。そして次に登録用の写真です。会員や仲人は、最初に写真……つまりルックスを重視します。なので会員にはプロのヘアメイクとカメラマンの手で極上の1枚を撮影してもらうんです。
『人間は外見より中身で勝負』というのは昔の言葉。現在は外見にOKをもらった人のみ、中身を見るチャンスをもらえる。残酷ですが、ルックスで人生が大きく左右されます」
この学びから、香織さんは真子さんに美容整形を勧めた。
☆娘を結婚を支援するため、膨大な労力とお金をかける香織さん。次回、そんな香織さんが愛娘とハイスペック男性のキューピッドになった経緯を届ける。激動の後編へ続く☆
取材・文:蒼井凜花