2023年に入ってからというもの毎月のように繰り返される値上げのニュース。6月には電気料金の大幅値上げが実施されるとあって、戦々恐々としている人も多いことであろう。値上げ自体は致し方ないとの指摘もある。問題は給料の上がり幅とのバランスである。4月に給与アップした会社が多いとは聞くが、それではまだまだ物価を上回るには至らない……。そんな悲鳴も聞こえてくる。
近藤由希子(仮名・35歳)も嘆くひとりだ。
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「賃上げは実施されましたが、なんていうのかな。焼石に水? まだまだ足りませんよ。最近、20代の後輩たちが続々と海外に渡っているんです。そりゃそうですよね。デンマークとか、週休3日で日本より全然賃金が高いなんてケースもあるらしくて……。そんなんじゃ日本にいる意味、わからなくもなりますよね。とはいえ、私は何かすごい特技があるわけでもないし、そもそも英語しゃべれないし……国内で頑張るしかないんですけど」
そんな日本で生きていかざるを得ない由希子は、この半年ほど婚活に励んでいるという。
「今年36歳になるんです。去年3年付き合っていた彼と別れました。結婚するかなと思っていたから、結構ショックでしたけど、それよりも肩を落としたのは実家の母。35歳を超えてから急に結婚を急かすようになってきたんです。お姉ちゃんの子どもの写真をかわいいでしょうとたびたび送ってきたり、婚活の具合を探るような電話がかかってきたり……。正直、それが面倒で早く結婚してしまいたいと思っている節もあります」
今や婚活はアプリが主流。もちろんクラシックな結婚相談所に行く人もいるそうだが、由希子はそこにはまるで興味がないらしい。
「簡単にサクッと会える方が気が楽だし、誰か人を介すのが面倒で。だから友達の紹介とかもあんまり好きじゃありません。その点、アプリはわかりやすくていいんですよね。相手も婚活しているわけだから、その点でひとつ共通点がありますしね」
なるほど。
「デートも基本は割り勘ですし、後腐れない感じもいい。それにもうこの歳になるとだいたい自分の評価額っていうんですかね? そういうのもわかるようになるんで、高望みもしません。普通でいいんですよ、普通で」
そんな割り切り型の由希子だったが、ある男との出会いでその概念が変わることになる。