校則の見直しが叫ばれるようになり、生徒たちの口から「ブラック校則」などと言う言葉が聞かれるようになった昨今、その校則を守らせる立場にある教員にも迷いや悩みがあり、その態度がまた新たなトラブルを生んでしまうようです。
「私たちの目から見ても、どうして守らなければならないのかと首をかしげてしまうようなものもあります」
そう話すのは、綾里さん(仮名・24歳)だ。彼女が勤めるクリスチャン系の女子高には、とにかく厳しい校則があり、その校則をなんとかしてかいくぐろうとする学生と教員との攻防が毎日のように繰り広げられている。
「清く正しく美しい高校生であること」が求められる女子高の生徒はもちろん男女交際禁止。前髪は眉の上でなければいけないし、肩につく長さの髪は、黒色のゴムで縛らなければならない。制服のスカートは膝を隠す丈で、カバンも防寒具もすべて学校指定のものしか使ってはいけないし、メイクは絶対にしてはいけない。
「でも、年ごろの女の子たちですからね。なんとかして自分をかわいく見せたいし、異性にも興味があります。私はどうしても、仕方がないよねという気持ちになってしまって、ついつい見逃しているのですけど……」
そう言って綾里さんは苦笑いする。
「校則を破る生徒を摘発することに命を懸けているような先生がいらっしゃって、その方は、学校から出て駅のトイレなんかで化粧をして出てくる生徒を見つけて学校に連れて戻ってきたり、生徒が通学に使っているバス内でスマホを使っているのを発見して、バス内で没収したりしています。ご本人はそれをパトロールと称して勤務時間外でも校則を破る生徒に目を光らせていらっしゃって、そして、生徒にはとても嫌われています」
そんな、校則を破る生徒の摘発に命を懸ける先生は、自分以外の先生が校則を破る生徒に対して甘い態度をとることも許さない。
「私も何度もその先生から注意を受けています。『校則は守るために存在しているのに、見逃すような教員は、教員の資質がない。生徒に忖度して、生徒を甘やかすことで自分が楽だという考えは間違えている。』なんてことをつらつら言われるのですが、私自身は、自分が楽だから、校則を破る生徒に少し甘くなってしまっているのではなくて、彼女たちの気持ちが理解できるからどうしても甘くなってしまっているだけです。それに、持ち物検査と称して、子どもたちのカバンの中身をすべてチェックするのも、プライバシーの侵害とかそういうのに引っ掛かるんじゃないかと思うと、しづらいんですよね」
綾里さんのように、生徒の気持ちもわかるし……という教員は少なくない。男女交際の禁止については、生徒自身のライフプランが大きく変わってしまう可能性があるからどう考えていくべきかという指導はするが、化粧やヘアスタイル、制服の着こなしについては、「学生らしくあるべきだから」という以上の説明はできない。だから、まあ、少しなら校則を破っていても……という態度になってしまうのだ。
さらに、男性教員は、女子生徒のスカート丈や化粧の注意をする際に、どんなに注意をしていてもトラブルに巻き込まれてしまうことがある。
次回では、男性数学教員Aさんが「ブラック校則」によって、女子生徒の声に苦しめられた悲惨な状況を詳報する。
ライター 八幡那由多