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HIKAKINのカップ麺が2000円。32歳の転売ヤーOLが語る「せどり業界の深すぎる闇」

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

大御所YouTuberであるHIKAKINがプロデュースしたカップ麺「みそきん」。先日の発売以来、手に入れることができないほど人気を集めている。そんな巷ではレアな存在だが、フリマアプリをひらけば別世界。「みそきん」は、数多く存在する。しかし、問題になるのはその価格だ。1800円、2222円、4800円と定価300円程度のカップ麺がとんでもない価格で販売されているのだ。これは通称転売ヤーたちの仕業だ。

転売ヤーとは転売屋とバイヤーを掛け合わせた造語で、他者から購入したものをまた別の他者にうり、利益を出す人のことである。世の中の多くの商品は、下代といって仕入れ値が存在する。これを上代いわゆる定価で販売することで、利益を出すのだ。それに対して転売ヤーは下代ではなく、一般に流通する商品を上代で購入し販売している。無論、上代以上の価格で売らなくては利益は出ない。

ただ、世の中の全ての転売が悪というわけではない。そもそも転売という商売手法が存在することも事実だ。問題視されているのはチケットのように法律で禁止された転売や前述のような常識範囲を超えた悪質な転売である。

高嶺恭子(32)は、そんな転売ヤーとして生計を立てているひとりだ。

「悪いことだとは思っていませんね。自由に経済活動して稼ぐ、これが資本主義ですよね。欲しい人に届くという意味では全然間違っていないと思います。逆に需要と供給のバランスよくないですか?」。

あっけらかんとこう答える。確かに、転売してもいい商品であれば法的には問題はない。

「でしょう?とにかく人気の出そうなものは、買えるだけ買いますね。それですぐにフリマアプリで販売します。でも最近は個数制限されることも多くて、嫌になっちゃいますよ。この前もあるブランドのポップアップで個数制限されたところです」。

価格はどれくらいを目安につけているのだろう。

「うーん。まずは定価に送料と手数料を上乗せしますよね。あとは購入に行った時にかかった交通費とかお昼代とか。それが最低限。そこからは市場調査して売れそうなら、かなり高値つけますよ。初めから安値はつけません。高値をつけておいて、売れなければ下げていく、そんな感じです」。

響子はもともとせどりをやっていたんだという。

「中国から雑貨を仕入れて、売っていたんですが、なんかつまんなくなっちゃって。私、多分買い物が好きなんですよね、リアルな。せどりには目の前で商品を買うという行為がないので飽きちゃったんだと思います。それで転売に切り替えたんです。これなら、ガンガン買い物できちゃうんで」。

最近ではどんなものを転売しているのだろうか。

「多いのはやっぱりゲーム、おもちゃ関連ですね。売れるんですよ、本当に。女性だからか、買い占めてもあんまり嫌な顔されないんです。結構嫌な顔される人もいるみたいだから、その点はラッキーですね」。

昨年のクリスマスも一儲けしたんだという。

「クリスマスは転売ヤーにとって、かき入れどきです。だってこれほど、みんながプレゼントを探している時期って他にないでしょう?それに、絶対に手に入れたいから、高額でも買ってくれる場合が多いんです。人気キャラのフィギュアやぬいぐるみ、ゲームのソフト、アニメのグッズなど、とにかくおもちゃ屋さんは、宝の山。今年も早くクリスマスが来ないかなと思っているところです」。

気が早いが、それまでの下調べもかなり重要らしい。

「何が人気なのかを知らないと転売はできませんからね。普段からリサーチはかかせません。漫画とかアニメは、一通り見ますよ。というか今は転売だけで生活をしているので、時間があるってとこも大きいですけど。ネトフリのアニメは、ほぼ制覇していますね」。

転売を始めて、もうすぐ1年。この半年ほどは、ほかの稼ぎなくても生活ができるくらいになったそうだ。

「私実家暮らしなんですよ。古くてボロい家だけど、家賃はかからないし、食事もなんだかんだ家にあるものでまかなえるので、転売で出た利益だけでなんとか暮らしていけるようになりました。それまでは近所のパチンコ屋や日雇いのバイトをしたり、しなかったり。定職についたことはありません」。

そんな恭子が最近、転売しているのがトレーディングカード、通称トレカだという。

「ニュースとかでも高額商品があるっていっていますし、何より小さくて場所を取らないところがありがたい。配送もすごく楽だし。そもそも1枚1枚は少額なので、買いやすいところも嬉しいです。いまだにレアカードがどれか?とか、よくわかんないんですけどね」。

こうして、恭子は転売商品をトレカに集中させるようになっていった。

「初めのうちは調子よかったんです。でも爆発的な稼ぎにはならなくて、何かいい方法はないかな?と探していたところ、ある情報が手に入って…」。

それは、とあるトレカをカートン買いして寝かせておくというまるで投資のような手法だ。

「1ボックスで20万円以上するので、すごく悩みました。しかもすぐに結果が出るわけではないので。でも買っておけば、数年後にはもしかしたら倍、いやそれ以上の値段になるかもしれない。それでカードで買うことにしたんです」。

確かに今ではトレカ1枚に100万円、いやそれ以上の価値がつくこともある。

「ただの紙のカードがお金に変わるなんてミラクルですよね」。

しかし、そう簡単に問屋はおろさない。ある出来事をきっかけに恭子のお財布事情は窮地に追い込まれることになる。

「投資分以外にもトレカを買って転売していたんですが、そのトレカがなんだか急に売れなくなったんです。理由がよくわからなくて調べてみたら、どうやらそのトレカのゲームルールが変わったらしくて…」。

トレカはそもそもゲームを行うためのツールである。なかにはゲームのルールが変更される場合があるらしい。その結果、カードの価値ががらりと変わることがあるんだという。

「昨日まで2000円で売れていたカードが、500円になったりしていてびっくりしてしまいました。こんな博打みたいな商品だったなんて知りませんでした。雲行きが怪しくなってきたので、一旦手持ちのトレカを全部転売することにしたんです」。

するとミラクルは起きた。

「あの投資用に買っていたボックス買いのカードが、なんと倍額以上になって売れて。もうウハウハです。だって20万円が40万円ですから。全部で150万以上になりましたね」。

一見するとうまく儲けが出ているようにも思える。しかし、恭子はこの投資用トレカの支払いをカードのリボ払いで行っていたのだ。

「リボ払いって月額で払う料金はさほどじゃないんで錯覚を起こしちゃって。残ってた支払いを儲けでしちゃえばよかったんですが、そのまま違う商品を購入したり、ちょっといいものを食べたりするのに使っちゃったんです。しかも、結構な利益が出たから、転売も少しお休みしていて…」。

翌月、恭子はほとんど収入がないことに気がついた。

「まずいと思って、また転売を始めたんですが…。どれもあんまりうまくいかなくて、家計は火の車…。その月は母に頼ってなんとか凌ぎました」。

さらに不幸は続く。税務署から手紙がきたのだ。

「インターネット取引等についてのお尋ねというものでした。過去3年分の収入や所得を記入するようなものでした」。

それが何かはわからなかったものの怪しいと感じた恭子は、同じような事例がないか、検索をしてみた。すると恐ろしい事例が次々と現れたのだ。

「家に税務署の人がきたとか、追徴課税が何千万とか…。もちろん私はそんなに稼いでいたわけではないのでウン千万にはなりませんが、それでも申告が必要なことは確かなようです。家に税務署の人がくると洗いざらいすべて見せる必要があるようなことも書かれていました」。

給与所得のある人が副業としてフリマアプリなどを活用する場合は20万円以上、給与所得のない人の場合は48万円以上の利益が出た場合は確定申告が必要である。恭子は後者。もちろん48万円はゆうに超えている。これまで確定申告をしてこなかったんだろうか。

「パートのときは親の扶養に入っていたのかな?よくわからないんですが、確定申告をしたことはありませんでした。せどりや転売を始めてからは以前よりも収入があったことは事実です」。

このままにしておいていいはずはない、恭子はそう思ったが実際にどう申告していいのかまるでわからないのだという。

「最低限、生活費と毎月のカードの支払いは稼がなきゃならないので転売は続けています。ただトレカの転売をやめた今、次の目星が立たず、かなり苦戦をしています。買い占めたいけれど、さほどお金もない…やばいルーティンですよね。このまえなんとか手に入れたフィギュア3体は、自ずとすごい高額で売りに出しちゃいました。8000円くらいで買って、35000円くらいで売りましたね」

ここにモラルはもうない。

「ただ転売でものが売れるたび、あの税務署からの手紙が頭をちらついて…。怖いです、正直」。

恭子はなかなか踏ん切りがつかないまま、今の暮らしを続けているそうだ。

転売は商いのひとつの手法である。それ自体は、違法ではない。しかし、そこにはルールが存在する。転売不可の商品があること、売り上げによっては申告が必要なこと、そしてモラルのある価格で販売をすること。これら最低限のルールを守らなければ、罰せられる可能性が大いにある。

まさかと思い、最後に恭子に聞いてみた。

「あのラーメン?もちろん買い占めましたよ。コンビニでめちゃくちゃ嫌な顔されましたけど。でも全然売れませんでした。売れたのは初日の2個だけ。残ったものは自分で食べるしかないですね…」。

おそらくこの先、恭子は追徴課税を受けることになるだろう。そしてその支払いのために、さらに転売に力を入れることになる。

「でも仕方ありません。もうバイトして地道に稼ぐなんてやりたくありません。楽に稼ぎたいんですよ。もう全部馬鹿らしくって」

ルール違反をしてでも楽に稼ぎたいとは世も末である。
取材・文 悠木律

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