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「この作品に感動するかで『人間性』がわかる」と宣伝ツイートした、映画館のネット炎上

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

キミの人間性を査定してあげるよ!

久しぶりの活気溢れるGWでしたが、ネットはいつも通りの平常運転でした。連休直前の4月28日、ある映画館チェーンが、映画を宣伝するこんなツイートを投稿したのです。

【この作品で感動するかしないかで、「人間性があるかないか」がわかるそうです みなさまも映画館でご自分の人間性をお確かめくださいませ】

なるほど、ガソリン抱えて火中に飛び込むようなツイート、強い。自分たちの商材で「オマエを査定してやるぜ」というナゾの上から目線。「人間性」なんて主語のでかいワードをブン回す危うさ。添えられた画像は燃えあがるランドマークタワー。清々しいほど炎上要素が満載です。

無論、この投稿には批判が殺到し拡散、慌てて謝罪文を投稿したんですが、それがまた「やってはいけない」のお手本みたいなヤツで……。

【不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません。作品に対してネガティブな感情や、お客様の受け取り方をこちらで判断する意図で書いた訳ではございませんが、そのように受け取れるツイートをしてしまい、深く反省しております(抜粋)】

うむ、どんな意図があろうと、謝罪時に「不快な思い」は使っちゃダメです。このワードには「不快に感じさせなければ問題は無かった」「不快に感じた側にも原因がある」と曲解されるリスクがあり、謝罪の場面であえて用いるメリットはナシ。謝罪のプロが最初に排除するNGワードです。

またお客さんよりも先に「作品」に対して謝罪したのもNGでした。本件、映画製作サイドは完全な「もらい事故」だし、裏でメチャ怒られたのかもしれませんが、言ってみれば作品=身内です。そっちを優先すれば「誰に向けて謝っているのか?」「本当に謝罪する気あるの?」と邪推されかねません。恐らく実際にそんな批判もあったのでしょう。ほどなくこの謝罪コメントも削除されました。

必ず、守る

炎上ツイートに添えられた画像の「必ず、守る。」というセリフが「守れてねーじゃん」というツッコミを招く、なんとも切ない炎上でしたが、実は本件、企業のネット炎上を理解するうえで、非常に分かりやすい事例でした。

だって、これがもし個人による「映画を観た感想」なら、どう転んでも炎上には当たらないワケで、仮に文句をつけられても「うるせーな、俺がそう思ったんだから勝手だろ」でガン無視OKな案件なんですよ。

そもそも「個人」のネット炎上なんて、違法行為か反社会的言動の投稿ぐらいなもの。それ以外の騒動は単なる反響・異論・意見の相違であり、たとえメディアが「炎上した」と報じても、実際はただの議論でした、というケースが殆どです。昨今はなんでも気軽に「炎上!炎上!」って報道され過ぎなんですよね。

ですが、これが「企業」となると話は大きく変わってきます。ビジネスに悪影響が及ぶ騒動なら(謝罪するかは別として)、反響だろうが議論だろうが、もれなくネット炎上として対処せざるを得ない。なぜなら、

「本件はただ反響を呼んだだけであり、ネット炎上ではございません。ですが本件の影響により、事業の継続が難しくなり~」

なんて事態に陥ったら、もはやネット炎上の定義なんてどうでも良いですからね。今回の「人間性」炎上だって、別に誰かに迷惑をかけたでもなく、特に謝る必要も無いのですが、意地を張っても観客動員数に悪影響を及ぼし、企業価値を下げるだけ。じゃあ誰にどう謝ろうか、という話になるのです。

企業は「なんでも炎上」という壮大なゴールポストをカバーしなければならない時代。社内の危機管理担当には、昼も夜もない、俺たちに明日はない、そんな時代なのです。

来年のGWはゆっくりできると良いですね。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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