「すっかり忘れていたんですが、3月21日は家族4人で久しぶりに焼肉にいく約束をしていたんです。大学進学を決めた息子を祝う会で、息子たちも都合をつけてやっと日にちが決まったんです。それを忘れていたことが妻には決定打だったようです。その上、家族でいくはずだった焼肉に違う女と行ったこともバレていました」
後でわかったことだが、ここ数年の謙也の暴言を妻はすべてメモしていた。さらにここ数ヶ月は暴言を吐くたび、こっそり録音もしていた。これは妻の弁護士から明かされたことだ。
「メモをちらっと見せてもらったんですが、何月何日何時何分に言われたか、そしてそれに対してどう思ったかがぎっしり書かれていました。改めて、文字にして見るとひどいことを言ってきたと思いました」

謙也にとっては青天の霹靂。ただ妻にとっては用意周到に計画されてきた離婚だったのだ。その証拠に妻はすでに別のマンションに住まいを移した。長男はすでに一人暮らし、次男もこの春から大学進学で上京。謙也はひとりこの家に取り残されたことになる。しかし、謙也はどこまでも能天気だ。
「一応、僕も知り合いのつてを頼って弁護士を頼むことにしました。離婚がしたくて、女遊びをしていたわけではないんです。家庭というよりどころに甘えきっていたことに今、やっと気がつきました。でも30年一緒にいたんですよ。話し合えば、きっと分かり合える、もう一度やり直せると思うんです」
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