■まとめ
中島氏はこう言う。「今回の事故では、トラック側は、実験と称した資料をもとにしたとする意見書を提出してきました。が、石を載せたあおり部分の木材種類はおろか、幅の記録すらありませんでした。追試ができない実験は、実験の名に値しません。科学の方法論に基づいた「実験」としては致命的な瑕疵です。
中島氏による検証実験の様子。万が一、落石があったとしても、布製あおりで受け止められるよう、対策も施した
また、相手方の実験では、砕石が落ちた場合の備えがありませんでした。当該道路は、現場付近の幹線で交通量は少なくありません。無関係な他車などが通行する公道で実施する実験としては、安全性への配慮がまったくないことは非常に不自然でした。落石したときに、それを受け止める簡易的なネットすら装備せず、「実験」を実施しているのは、あたかも『あらかじめ落石しないことが分かっていた』かのようです。このような「実験」は、『自分がやったときはできた』以上の意味をもたず、証拠にはなりえません」。
トラック側の保険会社による意見書の実験内容についてはさておき、中島氏が提出した「結果」は、客観的な説得力があるものだった。やはり科学的根拠に基づいた検証実験は、大いに意味をもつものだと再認識した今回の事例であった。
Superviser:Hiroshi Nakajima
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:Raptor,Gettyimages
Edit:Takashi Ogiyama
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