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橋本愛さん「女子風呂」騒動。彼女は謝罪までする必要があったの?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

多様性の「当たり屋」被害に遭った橋本愛さん

週明け早々、ツイッターが「女子風呂」というワードで溢れ返り、いったいどんな事件が起きたのかと思ったら……女優 橋本愛さんのSNSが大変お気の毒なことになっていました。

橋本さん、ご自分のSNSに「トランスジェンダーが公衆浴場や公衆トイレを使用する際は、体の性に合わせて区分する方がベターでは」と投稿したんですね。フムフム。続けて「体が男性の方が入って来たら警戒するし、恐怖心も抱く」という、ごく当たり前な気持ちを、多方面に気を遣った、非常に丁寧な言い回しでコメント。なるほどね。

要は、性自認が女性というトランスジェンダーが「コチン」ぶら下げて女湯に入ってきたら、愛ちゃんビビっちゃう、というごもっともな意見表明。そりゃそうでしょ。だって女湯を「コチン」ブラブラさせた人が歩き回るのは、さすがにちょっと、というか相当激しい光景ですよ。

ところが、この投稿を一部界隈が「差別だ!」と拡散、激しいバッシングが始まり、その流れを受け、なんとご本人が謝罪に追い込まれたそうです。えっ? うーん、うーん、そんな個人的な考えすら言っちゃダメなの? 彼女は自分の考えを表明しただけであって、トランスジェンダーへの批判や銭湯からの排除を唱えたワケでもない。それすら許さないの?

橋本さんがご自分の気持ちを表明するのは自由でしょう。そして、その発言が気に食わないと思った人が「差別だ」と感じ、そう表明するのも自由です。でもそれが「取り消せ」「謝罪させろ」になったら、話はずいぶん変わってきます。

私たちはそれぞれ、嗜好や考えが違って当然です。苦手だ、無理だ、という感性の部分まで無理して合意する必要はなく、苦手だけどまあガマンしよう、が落とし所でしょう。多様性社会は互いのガマンによって成り立つものですからね。そもそも「気に食わないから取り消せ、謝罪しろ」は、「あなたの意見も気に入らないから取り消せ」というカウンターを喰らって瞬殺される、とても愚かな行為です。

誰も傷つかない?

「女湯でコチンをブラブラ」がそんなに重要で譲れないテーマなら、そう主張する人たちが資金を出し合って、

「うちは性自認で男女を分けるお風呂屋さんでっせ」

というスーパーな銭湯を作ってみたらどうでしょうか。ちなみに保健所は条例に則り、新規の「混浴風呂」に許可を出さないので、そこはガッツリ揉めると思いますが、とにかくそこに集いたい人だけが集えば良い。無論、性的ストレートな女性たちからは見向きもされないだろうし、今回、当のトランスジェンダー達からも「ジロジロ見られる女湯になんか入りたくないな」という声が聞かれましたから、あまり流行らないかもしれませんが。

気の毒な橋本愛さん、「ヘイトの気持ちがなくても、無自覚に人を傷付けた」という反省コメントまで書かれていました。まあ、そうは言っても、世の中にあふれる「素敵なファミリーを描いたCM」や「かわいいワンちゃんが出てくる広告」だって、様々な事情を背負った誰かを、ヘイトの気持ちもなく無自覚に、でも確実に傷付けていますからね。ならば社会全体で「表現」やめますか、黙りますかって言ったら、そうはなりません。そもそも表現において「だれも傷つかない」など、まずありえませんから。

ある人たちにとって都合の良い「多様性」を突き詰めていくと、些細な言葉狩りが横行し、声の大きい人の主張がまかり通る社会がやってきます。多様性でも何でもありません。そんな間抜けな社会、間抜けな言論空間はカンベンですよ。そうならないようにしたいものです。

ああ、なんとか記事を書き終えたので、ちょっとブラブラしてきます。


Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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