■積み荷による影響は考えにくく、不規則な転舵や蛇行・急加速や急制動もみられない
中島氏がまず着目したのは、中型トラックが横転する条件についてだ。トラックの設計図には、空荷の状態でこれ以上傾くと横転するという限界角度「横転角」が記載されている。横転したトラックと同型車の横転角は、「右45.0度、左42.6度」だった。ただし、横転したトラックの荷室には、約256kg分の発泡スチロールが積まれていたため、重心が上がり横転角が減る(=倒れやすくなる)が、荷物込みで算出した横転角は、「右42.1度、左43.4度」。5600kgのトラックの車重に対して、荷物256kgの有無では、ほとんど変わらないと判断した。
また中島氏は、トラックが急旋回によって横転しやすいと考えられることが多いのも、貨物の質や積載方法によるものだと指摘。仮に、当該トラックが遠心力で横転するのであれば、旋回時の向心加速度は0.93G以上が必要であり、これには路面の摩擦係数は0.9以上ないと実現できない。このような加速度は、超高性能スポーツカー専用タイヤを用いて、乾燥しているレース場のような徹底的な整備をされている路面でも達成できるかどうか難しい大きさだ。つまり積み荷には、横転に至る要因はなかったと判断した。
さらに、ドライブレコーダーに映った橋の柱の映像に画像処理を行い、トラックのロール量を割り出した(グラフ参照)ところ、横転に至る直前と思われる領域Aにおいて、グラフの傾きはほぼ一定でごく緩い。緩いながらも右傾斜が増加しているのは、横風によって、右サスペンションが縮みながら力を受け止めている状態と推定され、急な変化は見られないことから、トラックは「不規則な転舵や蛇行・急加速や急制動はしていない」といえる。
グラフの傾きが急増加している領域Bでも、グラフの傾きはほぼ一定。これは横転に向かって一定の角速度で傾いていったことを表しており、横風を側方から継続的に受けていたことになる。また角度変化が直線的だったのは、左タイヤが浮き始めてから衝突まで、特段の車両操作がなかったことを表している。