相手の合意なしに行為に及ぶ、劣悪な性犯罪被害は後を絶たない。近年の調査によれば「女性の約14人に1人は無理やり性交等をされた経験があり、加害者の大多数は被害者が知っている人物で、全くの未知の人物からの被害は1割程度」なのだという。
探偵社にも多く調査依頼が来る分野ではあるが、その依頼主は被害者に限らないというのが実情だ。冤罪を訴える加害者側やその家族、事件があると不都合な組織からの依頼も珍しくない。
今回はそんなケースの中でも、加害者側についた学校からの事例をご紹介する。
・・・・・・・・・・・・・・・
その案件は、関西のある高校からの依頼だった。
「校内でベテランの男性教員が、新任女性教員と無理やり……その関係を持ってしまったらしく……。あ、でも、事実関係は証明されてはいないのですが」
学校側の弁護士は、歯切れの悪い感じでそう説明した。
男性教員の方は合意だった言い、女性教師は力づくでされたと主張している。学校側は示談で解決しようと、被害者の女性教員を説得し、和解金を提示。しかし被害者女性はそれを拒否した。1年近く事態は進展しないまま、被害者女性はその事が原因で患った「うつ病」を理由に、有給で療養中であるとのことだった。
額ににじむ汗をハンカチで拭きながら、腹の出た校長が言う。
「うつ病なんて嘘だと思うんですよ。本当は、有給生活を謳歌しているのではないかと思うんです」
「先方が他の男性と交際しているとか、こっそりアルバイトしている事実などがわかるといいのですが……」
恐る恐る、学校側の弁護士が言った。
うつ病を患っていない可能性や、またはその期間中に別の場所で勤務していることが証明出来れば、学校は有給を取り消す事ができるからだろう。
学校側の弁護士は、弊社の創業者の旧友で長年お世話になっている人物。3代目である社長は、彼から懇願され依頼を断ることができなかったということを後から聞いた。
学校側と相談の上、1週間被害者である女性教員の行動を調査することとなり、その頃新人探偵だった私も調査メンバーに入った。
私は正直、調査対象者である「後藤香那」(仮名)が虚偽の証言をしている可能性があると疑われていることに動揺していた。被害者女性の生活を探り、加害者側についている学園に報告するなんて……倫理的な問題を感じていた。
そんな私の表情を読んだのだろう。先輩探偵が私を諭す。
「事実だけを見ればいい、色眼鏡はいらない。それが、彼女の潔白を証明することにもなるかもしれないんだから」
探偵に先入観は禁物、しかし……。そんな思いで気乗りしないまま、後藤香那の調査は始まった。
☆1週間の被害者調査で見えてきた、「後藤香那」の素顔は、我々の想像を裏切って余りあるものだった。次回ではさらに詳細に事の顛末をレポートしたい。
私立探偵 こころたまき