■レギュラーとハイオクの違いは、「発火のしにくさ」
ハイオクの「オク」は「オクタン価」のことを指します。オクタン価とは、ガソリンのアンチノック性、つまり発火のしにくさを数字に表したもので、日本のJIS規格では、レギュラーのオクタン価が89以上、ハイオクが96以上と定められており、数字が高い方が発火しにくくなります。
留出したばかりのガソリンは、オクタン価が70程度ととても低く、そのままでは異常燃焼しやすいため、化学反応によってオクタン価を高め、その後ベースとなる基材をブレンドしてオクタン価を調整するという方法で製造されています。よく「ハイオクのほうが、純度が高い」「ハイオクにはパワーの出る添加剤が入っている」などといわれますが、これは間違いで、レギュラーもハイオクも基本的には同じつくり方でスタートし、ベースとなる基材をブレンドすることによって、レギュラーとハイオクをそれぞれつくりわけます。
ハイオクのほうが、価格が高いのは、使用する基材が異なることに加えて、ハイオクはエンジン内部が汚れやすいという特徴があるために、洗浄剤を入れている必要があるため。また、高性能車がハイオクでなければならない理由は、ハイパワーなエンジンでは、圧縮比を高くしてプラグの点火時期を遅らせているため、オクタン価が低いガソリンを使用すると発火が早くなってしまい、十分なパワーが出せなくなってしまうからです。
■オクタン価の規格は、国によって違う
オクタン価の規格は国によって異なります。たとえば筆者の住むイタリアでは、レギュラー=95、ハイオク=98というオクタン価になり、これが欧州での一般的な規格になります。北米では、レギュラー=87、ミディアム=89、ハイオク=93という数字ですが、北米は、日本や欧州とは違う測定方法を使用しているため、この数字に4〜5程度を足すとよいそうで、そうすると、欧州とほとんど同じぐらいのオクタン価となります。
そのため、欧州や北米の「レギュラー」仕様のクルマは、オクタン価「95」程度を使用する前提で設計されていることになります。このクルマを日本で乗るとなると、ハイオクでなければ本来の性能が発揮できないことになります。
ちなみに、筆者の自宅付近のガソリン価格を調べてみたところ、レギュラーが1.876ユーロ(約269円)/L、ハイオクが2.176ユーロ(約312円)/L、軽油が1.856ユーロ(約266円)/Lでした。いずれも日本と比べてかなり高いです。
原油価格の高騰は今後も長く続くとみられています。電動化が進んでいるとはいえ、まだまだガソリン車は私たちにとって身近な存在。この状況が一刻も早く改善されることを願います。
Text:Tachibana Kazunori,MMM-Production
Photo:AC、Adobe Stock
Edit:Ogiyama Takashi