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LIFESTYLE 女たちの事件簿

「早く現実を受け入れて!」我が子の障がいから逃げる父親と立ち向かう母親。なぜ隔絶してしまうのか?

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不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

我が子の教育を巡り、諍いを重ねる夫婦は珍しくない。

海藤朱里(仮名、以下登場人物はすべて同じ)は出産を機に仕事を辞めて専業主婦をしている33歳。 長男の櫂と夫の隆との三人暮らしだ。

ある日、朱里のスマホに幼稚園から着信が入る。

「今日のお迎えのときに櫂くんのことで、お母さんご相談をしたいのですが…」

朱里は「やっぱり来たか」とため息をついた。 日頃から櫂の育児にはほとほと悩んでいた。 

元気いっぱいなのだが、少しエネルギーが迸り過ぎているような気がする。自分の気に入らないことがあると、酷い癇癪を起こすことが多々あって、悩みのタネだった。

©Getty Images

幼稚園の担任によると、お弁当の時間に立ち歩くことが多く、座ってお弁当を食べるように話して聞き入れないと言う。

泣いて頭を壁に打ち付け続けるなどの行動も後を絶たない。集団でお遊戯の練習などに取り組むときも、いきなり幼稚園のホールを抜け出し、走ってどこかに行ってしまう...。

「療育センターで発達について相談してみてはいかがでしょうか?」と言われて、朱里は目の前が真っ暗になった。なぜうちの子が......

「もし櫂が発達障がいだったら?」 

「櫂が障がいがあるのは私のせい?」 

「それとも育て方が問題だった?」 

そんな考えが頭の中をグルグル回り続ける。

朱里は発達相談を受けるべきか、夫の隆に相談することにした。

櫂の癇癪が起こるとすぐに朱里に育児を任せ、悪戦苦闘している横でスマホゲームをしているような夫だ。頼り甲斐はないが、頼れるのはこの男しかいない。

夫は朱里の懸念の全てを聞いた後、笑いながら言った。

「櫂が発達障がい? おまえ、考えすぎだろ!」

 日頃、夫が息子のことを露ほども気に留めていないことに、朱里は愕然とした。これほど育児が深刻な状態なのに「考えすぎ」とは何か。こいつには何も見えていない。

もし仮に考えすぎだったら、いかに幸せか。しかし、幼稚園で櫂は紛れもなく、園内一の問題児なのだ。

朱里が絶望感に打ちひしがれている間にも、櫂の問題行動は続く。

外出先でも些細なことで泣きわめく。落ち着くまで1時間ほどかかるため、隆が激することもある。 櫂は隆の手や足に噛みついて抵抗を示すこともあった。

周囲を全く見ずに突然動くので、物や人にぶつかったり、恐れもなく高いところに登り足を踏み外して捻挫などの怪我が絶えない。

そんなある日、「気のせいだ」と言っていた夫があり得ない一言を漏らす。

「俺には無理。もう育てられない」

家庭関係のトラブルに詳しい、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は言う。

「障がいのある子供たちを社会が育むネットワークは徐々に充実して来ています。しかし、肝心の家庭が一丸となって我が子のバックアップ体制を取らないと、結局関係者一同が窮地に陥る羽目になってしまう」

☆第2話ではADHDと診断された櫂を巡る両親の反応から、この問題をさらに深く考えてみたい☆

Text:女たちの事件簿チーム



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