「自分だけは騙されない」。誰しもにそんな無根拠なバイアスは働くが、詐欺の手口は巧妙になっている。近年は高齢者をターゲットとするオレオレ詐欺だけでなく、恋愛感情を利用した詐欺などあらゆる手法が横行している。
今回FORZA STYLE「ライフ取材班」がレポートするのは、マッチングアプリで出会った相手の甘言にのせられた結果、詐欺被害に遭った主婦の証言である。
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東山友希（仮名・49歳）は、夫と子ども２人と閑静な住宅街に暮らしている。コロナ禍になり、仕事はリモートワークが増え、出かける機会が極端に減ったという。
「自分でもびっくりするぐらい、老け込んだな……と鏡を見て、愕然とすることもしばしば。でも家から出なくてもいい暮らしを知ってしまってからというもの、なかなか気合が入らなくて」
夫からはまるで女として見られていない。無論、カラダの関係はゼロ。今では寝る部屋も別になってしまった。
「下はスウェット、上だけ着替えてリモートワークしている姿を見て、あえて口にはしてきませんがうんざりしているんじゃないかな？ 息子ふたりは、私の姿を見て女性へ幻想が砕け散っているかもしれません」
そんな友希を見かねた同僚がある日、あるアプリを紹介してきた。
「いわゆるマッチングアプリでした。彼女は英会話をブラッシュアップする目的で始めたらしいんですが、そこで出会った人と１ヶ月に２度ほど、お茶をしたり、食事に行ったりしているそうで。なんか面くらっちゃいました。出会い系っていっても、恋愛だけじゃないんだなって」
日に日に若返り、活力にみなぎっている同僚に感化され、友希もアプリをひとまずアプリをダウンロードしてみることにした。
「驚きました。ダウンロードした途端、いろいろな人からアプローチがあって。それを見ているだけでもなんだか嬉しくなって、俄然やる気が出てきたんです」
友希はこれまでの怠惰な生活を一変させた。きちんと着替え、丁寧に化粧をしてからリモートワークに挑み、休みの日には美容院にエステ、買い物と20代に戻ったようにアクティブに出かけるようになった。
「アプリで出会った人とは、もちろん会うようになりました。今まで５人くらいかな。食事したり、中には少しその先まで進んじゃったケースもあるけど。まぁ、許される範囲だったんじゃないですか？ 不倫にあたる関係までは進んでいなかったんですから」
友希は50歳を目前に二度目の青春を謳歌していた。悪魔が忍び寄ってきているとは予想だにしないで。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、マッチングアプリを利用した詐欺について警鐘を鳴らす。
「最近、マッチングアプリを使った特殊詐欺が増加しています。被害者に40代や50代の女性が多いことが特徴ですね。恋愛感情を抱いた相手への『喜んでほしい』『嫌われたくない』『好きな人が詐欺などするわけがない』などどいう気持ちを利用した悪質な手口です」
「マッチングアプリに慣れてきたころ、ある男性から連絡がきて会うことになったんです」
相手は52歳で同郷であることから、話に花が咲いたという。
「私は同じ年齢の兄がいるんですが、兄とサッカークラブで一緒だったらしくて。兄に確認したわけではありません。でも、かなり詳しいことまで知っていたし、すっかり信じてしまいました」
それから2人はたびたび食事に行くようになったという。
「恋愛って付き合うまでが楽しいですよね。それを２人とも楽しんでいるといった感じでしょうか。男と女の関係にあえてならないといいますか。相手も同じ気持ちだと思っていました」
そして3ヶ月ほど経ったある日、彼からこんな誘いを受けたという。
「投資に興味ないかって。最近始めたけど結構儲かるんだよ、なんて話をしてくれました。『よかったら少しやってみない？』と言われて、いいよと軽く返事をしたんです」
簡単な儲け話なんて世の中にない、そんなことは頭では重々理解していたが、ここで断れば会えなくなる、そんな風に感じたという。
運命的な出会いに心躍らせる友希。しかし、この儲け話は結果的に200万円もの大損害を友希にもたらすことになる。甘い話には、必ずウラがあるのだ...
