人間の本性を見抜くのは難しい。親兄弟や愛する人であっても、ふとした瞬間に意外な一面を見て驚くことがある。いい姑だと見せかけて、その裏で激しい嫁いびりを繰り返す。そんな人も少なくないのかもしれない。
大塚麻美さん(仮名・39歳)の一家が義母と同居を始めたのは、夫である泰典さん(仮名・41歳)の転勤がきっかけだった。故郷への転勤が決まった泰典さんが、生まれ育った家での同居を切り出したのだ。
「転勤といっても3年間の期限付きだし、俺の実家に同居すれば家賃もいらないから、その間に俺と君の2馬力で頑張って貯金を増やそう。親父が亡くなってからお袋も暇みたいだし、家事は全部お袋に任せればいいよ」
麻美さんは薬剤師の資格を持っているため、転職先にもそれほど困ることはないと思い、了承したという。娘の香澄ちゃん(仮名)も3歳と小さい。おばあちゃんがいる広い家でのびのびと育ってほしいという思いもあった。
「お正月や長期休暇、娘の香澄(仮名)が生まれた時など、これまでに何度も顔を合わせていましたが、上品で穏やかな印象しかなかったんです。こんなお姑さんなら、3年間うまくやっていけるのではと思っていました」
そう語る麻美さんだが、最初に「ん?」と思ったのは同居してすぐのことだった。
「最初の違和感は食事です。例えばエビフライの数が私だけ少ないとか、前日の残りの黄色くなったご飯を出されるとか。さりげなく夫に訴えても、気のせいじゃないかと流されていました」
間もなく就職先の決まった麻美さんは、香澄ちゃんを保育園に預けて働き始めた。スーツはクリーニングに出していたが、義母が洗ってくれるはずのシャツや肌着などが洗濯されておらず、通勤着に困ることがたびたび起こるようになった。
「指摘すると義母は『女性の服はデリケートだから、別に洗おうと思って忘れちゃったの。ごめんなさい』と悲しそうに顔を伏せるんです。小柄な義母のそんな表情を見たら、それ以上責められず、自分の服は自分で洗うようにしました」
しかし、干している服に大量の醤油をかけてダメにされる、食器を割られる、本やアクセサリーなどの私物を捨てられる、入浴中に給湯器の電源を落とされるといったことが続き、麻美さんは「これは嫁いびりだ」と確信した。
「いつもうっかりミスのような顔をして謝ってくるんですが、私に対してだけミスするなんてことがありますか? 確かに保育園への送り迎えなど、義母に助けられている面もありましたが、夫に訴えても『お袋とうまくやってよ』と言うばかりだし、次第にストレスが溜まっていったんです」
家庭のトラブルに詳しい危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が言う。
「同居して義理の両親が豹変するケースは後を絶ちません。とくに義理の両親の家に入る形になると、相手のテリトリーの中に突入することになるので、深刻な事態になりやすいのです」
したたかな義母と鈍感な夫。そして決定的な事件が起きた。
麻美さんの堪忍袋の緒が切れるきっかけを作った衝撃的な事件については、次回詳報する。家族関係を円満に築くための反面教師として読んでほしい。
Text:女たちの事件簿チーム