【後編】「俺を馬鹿にしてるんだろ」身分違い結婚、知的障害の娘……劣等感コンプレックスにまみれた実業家の闇を暴く。

後日、依頼者宅で調査の報告をする。 応接間に置かれた調度品は、どれも劣化しているように見える。ソファーの上では、娘が床で寝ている飼い犬をじっと見ている。依頼者は愛人宅の写真を指差して言った。

「この家、結婚当時に夫と2人で『いつかこんな家を建てたいね』って話していた家、そのままです」

そして続けて、こうつぶやいた。

「結局あの人は、私に対する劣等感を消したくて、自分は別の場所で理想の家族をつくったんですかね……」

その通りなのだろうと思ったが、何を言っても気休めにしかならないと思った。
いざという時は、腕の良い弁護士を紹介できるということを伝えると、「はい。その時はお願いします」と、依頼者は力無い声で答えた。
依頼者宅を後にする時、娘にも「さようなら」と声をかける。

「バイバイ」 そう言いながら、まるで子供のように娘が笑った。

依頼者宅からの帰り道、私は悔しさと怒りとやるせなさが入り混じった気持ちになり、少しだけ泣いた。

TEXT：こころたまき
 

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