今回は、探偵業界でも話題になっている「高齢者の性愛トラブル」についてレポートする。この仕事を始めるまで、世間知らずだった筆者は「高齢者になれば色恋の欲求など薄れていくものだ」と信じていた。しかし実際は、悟りでも開かない限り、年を重ねようが簡単になくならないのが現実のようだ。そして、そのようなトラブルは高齢化社会が進むにつれて、確実に増えているのだ。
「会長の女性関係に参っています」
今回の事件の依頼者は、一族経営で、世界中に顧客を持つ美容系企業の社長夫人。
舅であり、創業者の会長が、事実上の最高権力者だが、その会長に複数の愛人がいるとのこと。舅が愛人に金を湯水のように使い続ければ、当然会社が傾くことから、社長の夫にも内緒で相談に来たのだ。
問題の会長は、都内タワーマンションに単身で住んでいる。毎日の掃除は女性従業員Sが専属で行っており、彼女がいち早く会長の「愛人活動」に気が付いた。会長の自宅マンションには、度々、女性が宿泊した痕跡が度々残っているという。
「掃除に入ると、浴室や洗面所の床に長い髪の毛が何本もゾロっと落ちていて、ベッドの上にも使用済みのティッシュペーパーや、大人のオモチャが散乱しているらしいんです。本当におぞましいでしょう？」
品の良い身なりの依頼者が、顔を真っ赤にして、こちらに同意を求めて来た。「お相手の女性も、身の始末くらいして帰ってほしいですね」と返したところ、依頼者の表情が少し緩んだ。
更に、驚くべきは会長の年齢だ。会長は現在88歳。10年前に妻を亡くし、その後、徐々に「パパ活」に励むようになったという。聞けば、愛人と疑わしいのは次の3人である。
50代の着付け講師のA子/20代のメイクアップアーティストのB子/40代の美容外科医のC子
依頼者によれば、「着付け講師のA子」は、かなり怪しいという。会長は着物に目がなく、全国で着物品評会や着付けコンクール等、着物に関係する様々なイベントの主催やスポンサーになっており、自身でもかなりの数の反物をコレクションしているとのこと。
そのイベントなどに必ず関係してくるのがA子で、講師として招き、高額のギャラを支払った上、今までに何度も高価な着物を買い与えているという。これまで会社から会長名義でA子に多額の金が動いている。会社の経理状況を全て把握している依頼者は、その度にはらわたが煮えくり返るらしい。
「とにかく、A子の証拠だけでもつかんで直接本人と交渉したい。お金で済むなら、スキャンダルになる前にさっさと手切れ金でも渡して清算させたいんです」
弊社は、A子と会長が男女関係であるという確実な証拠を入手する為、依頼者に室内隠しカメラの設置を提案したが、会長は模様替え好きで、室内のものを頻繁に動かす癖があるらしく、隠しカメラだとすぐ目について危険だと判断。
火災報知器型カメラなどもあるが、今まで無かったようなものが増えると必ず気が付くという。そこで、音声レコーダーを大型家具の裏などに忍ばせる方法を提案した。ただし、設置する理由は、あくまで「一人暮らしの高齢者である会長に何かあった時の対応のために、家族が希望した」という前提で実施しなければならない。その上で、家族である依頼者自身に設置してもらう必要がある。我々は依頼者のアドバイザーとして出向き、適所を検討した結果、会長の寝室と応接間とに、計2台のレコーダーを忍ばせた。
2日後、会長の留守中に、依頼者がレコーダーを回収。録音された音声を確認したところ、1日おきに別の女性が訪問している事実が明らかになった。1日目に訪れたのは外科医のC子で、聡明な大人の女性を感じさせる話し方をする。しばらく2人は応接間で話していたが、その後、応接間からは離れたらしく無音になる。そこから30分後、寝室の方のレコーダーから、ガサガサと包み紙を破くような音の後に、電気モーターの作動音が聞こえて来た。
「え？本当に？え？嘘？ 怖い」
というような、C子が少し拒むようにささやく声が聞こえたかと思うと、音声だけでも、どのような類のことが始まっているのかわかるような激しいC子の声が響き渡る。ただし、あまりにも激しく、そして長すぎる。それは、88歳の高齢者が‥と想像しがたいレベルだった。
我々の想像を超えるほど、現代の後期高齢者は「性愛強者」なのか。驚きの次回では、88歳会長の、「金に物を言わせて燃やすさらに激しいリビドー」と、その末路を詳細にレポートする。
Text：児玉総合情報事務所 こころたまき
