■実は利点が多い、ピックアップトラックのBEV化
こうした懸念を払拭するため、ピックアップトラックのBEV化が進んでいるのです(実際にはこれだけ大容量のバッテリーだと必ずしも環境に良いとは言えないのですが)。また、走りの面でも効果は高く、たとえば走行用モーターは、アクセルを踏んだ瞬間(つまり電気が流れた瞬間)から最大トルクを発生するという特性を持っているため、重い荷物を積んで牽引するというようなシーンでも、大排気量エンジン車と同等以上の軽快な加速を味わうことができます。
さらに、BEVはモーターの制御を細かく行うことができるため、刻々と変化するオフロード走行や、荷物の積載量に応じて駆動力を細かく制御し、より快適で安定した走りも可能です。こうした制御はオンロードでの走りにも応用することができるため、従来のフルサイズピックアップが苦手としていたオンロード性能も向上しています。また、巨大なエンジンやトランスミッションを搭載する必要がないため、ドライブトレインの設計に自由度が増し、室内空間の拡大や、後輪操舵のようなステアリング制御の拡張も可能となるのです。
たとえばハマーEVの場合、前輪と後輪が最大10度まで同位相にステアする「クラブウォーク(いわゆるカニ走り)」を可能としています。ハマーのような巨大なボディサイズでも、こうした機能を駆使して狭い場所や普段使いでの扱いやすさを向上させることができます。これもBEVならではの利点といえるでしょう。
アメリカでは最も人気があり、生活に欠かせないピックアップトラック。一見、BEVからはもっとも遠いところにいるモデルにみえますが、EVプラットフォームを十分活用することで、その魅力をフルに活かせるユニークなモデルをつくることができると思われます。今後のラインアップに期待したいですね。
Text:Tachibana Kazunori
Photo:GM,TESLA
Edit:Ogiyama Takashi