友人関係や家族関係、恋愛、金銭に関わることなど、昨今の高校生は多くの問題を抱えている。人知れず悩んだ結果、重大な事件を引き起こしてしまうこともある。
平倉紀子(仮名)が働く飲食店でアルバイトをしていた高校生カップルも、金銭が絡む事件の当事者となった。
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その飲食店では、二人の高校生が働いていた。
月島七海(仮名・16歳)は高校1年生。東欧の女性を思わせるきれいな顔立ちと大人っぽさの持ち主だ。おとなしい性格で異性とは積極的に関わらないが、三兄妹の末っ子だからか年上相手には少し甘えたそぶりを見せることがある。
もう一人の中村翔太(仮名・17歳)も、おっとりしていて優しげな雰囲気を持った高校生だった。
アルバイトのなかで高校生は二人だけ、しかも性格が似通っているというだけあって、彼らはすぐに仲良くなっていったという。
「うちの店には情報共有のためのグループLINEがあるんです。だから連絡先を知るのは簡単ですね。シフトの件とかでLINEを交換しつつ仲良くなり、交際に発展するカップルもたくさんいます」
七海がアルバイトとして入ってきてから半年近くが経ったころ、二人は付き合い始めた。告白は翔太のほうからだったらしい。
「お互い初めての彼氏、彼女だったみたいです。他のスタッフは若い二人の交際を喜びつつも見守っていましたね。特に翔太君は嬉しかったみたいで、いろんな人にのろけていました」
時々デートに行くようになった翔太と七海だが、しばらく経つと翔太の行動が七海にある違和感を覚えさせるようになる。翔太はほとんどお金を使わないのだ。
「七海ちゃん、最初は、あんまり買い物しない人なのかな?って思ったらしいんです。それにしても、少なすぎる。『一緒にマックに行ってもシェイクしか頼まないし、洋服を見に行っても何も買わない。せっかくのデートなのに。彼女の私に言えないことでもあるのかな』って、寂しそうにぼやいていました」
翔太は平日の夜や休日にバイトに入っていたので、金欠ということもあるまい。別の場所で使っていない限りは。
七海に問い詰められた翔太の答えは、「友だちに貸した」だった。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏によると、昨今の中高生は複雑な問題を抱え込むケースが多いという。
「とりわけ多いのが友人関係の悩みです。友人との関係を損なえば孤独だ、ひとりぼっちは恥ずかしいという思いを抱いて、かなり神経を使いながら人に応対する子どもも多いんですね。学校現場等に、依然として単独行動に抵抗を持たせるような雰囲気が残っていることも原因かもしれません」
翔太はなぜ、お金を貸してしまうのか。そしてこの後、彼は店全体を巻き込むさらなる事件を起こうすことになる。
訝しんだ七海が問い詰めたところ、翔太は友だちにお金を貸していることを告白したという。しかも、バイト代のほとんどを友だちに渡していて、返ってこないうちに次のお金を催促されていた。
そのうち、翔太は法に触れる手段でも金策に走ってしまう...次回では、現代の高校生のウラ事情を詳細にレポートしたい。
Text:女たちの事件簿