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【花束を渡すのは女の役目?】谷原章介から森保監督への発言は本当に炎上したのか?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

森保監督の花束が燃えた⁉️ まさに「非実在型」炎上

先日、サッカー日本代表の森保監督がワイドショーに出演し、タレントの谷原章介さんから「花束」を贈呈される場面があったんですが、谷原さん、花束を手渡す際に

「男からで申し訳ありませんが」

って一言添えたんですよ。私みたいな男から渡されるより、女性から手渡された方が嬉しいでしょ? 的なニュアンスで。そしてその数時間後、ネットにこんな記事が掲載されました。

「谷原氏の言葉に、SNSで疑問や不快感を示す声が」

記事の内容は、『谷原さんの「男から」発言に対して「この場面で男女は関係ない」「花束を渡すのは女性の役割なのか」といった批判があがってまっせ!SNSで』というもの。うむ……この記事はすぐにツイッターで拡散。同意する人、面倒な世の中だと嘆く人、いや価値観が古いんだよと反論する人、更には「モノ言うタレント」までが参戦し、つまり毎度お馴染みの「愉快な殴り合い」が繰り広げられたのです(ツイッターで「谷原 男からですみません」と検索すると、そんな殴り合いがモリモリ見つかります)。

ん-でも、ちょっと待って下さい。

で、その炎上、実在するんですか?

みなさん、谷原さんの発言が「ネットで炎上している」前提で殴り合っていますが、実はコレ炎上していません。この発言が放送されたタイミングで、彼の発言に「疑問や不快感」を投稿していた人はごく僅か、非常に限られた意見だったのです(ざっと数えましたが、私が見つけられたのは20〜30件程度)。その後も「疑問や不快感」を示す投稿は見当たらず、やがて記事が掲載され、拡散し始めたタイミングで突如「記事を引用した賛否の殴り合い」が始まった……これが事実です。

実はきっかけとなった記事には「炎上した」なんて一言も書いていません。ただ「そのような声が投稿されていた」という事実を述べただけ。シンプルな事実。事実だからそう書いた。この手の記事でよく使われがちな「波紋が広がっている」的な表現すら用いず、淡々と伝えているだけ、上手いんですよ。それを読んだ読者が「炎上しているらしいぞ!」と解釈して、愉快な殴り合いがスタートした。つまりこれは、存在しない炎上をめぐる争いだったのです。

この「炎上していないのに炎上」現象には名前があって、「非実在型炎上」と呼ばれるネット炎上体系の1つです。メディアがネットの片隅で見つけた、米粒みたいな少数意見にスポットライトを当て、「ご覧ください!火!真っ赤な炎!!燃えております!」と報じることで、「何だ、どうした?」とワラワラと人が集まり始め、あちこちで殴り合いが始まる、これが非実在型炎上の正体です。

過去、この非実在型炎上の餌食になった人や企業は数知れず。いずれのケースも、世間的にかなり偏った思考をメディアが面白がって取り上げ、それが予想外に燃え広がった結果、誰かさんが謎の謝罪を強いられたり、理不尽な販売中止に追い込まれたりしてきました。

ごく少数の意見でも、ちゃんとクローズアップして議論することは、決して悪いことではありません。むしろ多様性ってそういうもんだ。でも、だからと言ってそれが「意図的」に「不自然」に繰り返されたら、やがて「言えない表現」や「避けるべき行為」だらけの、窮屈な社会になってしまうんじゃないですかね。もはや多様性どころじゃない。

もともとネットには、マイナーな少数意見も多数派と同じように見えてしまう特徴、なんか声がデカい人が勝っちゃう「ジャイアニズム」があって、ただでさえ面倒なんです。「非実在型炎上」という言葉、覚えておいて損はないですよ。

その炎上、実在するんですか?

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)

※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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