真希が退職してから、隆史は香澄とペアで仕事することが多くなったのだという。一線を越えたのは、2人で出張に行った時。その後も隙を見ては、逢瀬を重ねていたのだとか。
「あまりのショックに、その後、どうやって香澄と別れて家に帰ったのか、まったく覚えてないんです。ただ、私は結婚をきっかけにニートのような生活になってしまったのに、隆史は悠々と仕事を続け、さらに自分を裏切って恋愛までも楽しんでいた……。それが許せませんでした」
真希は家に帰るなり、留守番をしていた隆史に写真を突きつけて問い詰めた。隆史は「違うんだ」「誤解だ」と言い訳にもにもならない言葉を繰り返すばかりで、香澄との仲を認めようとはしなかった。
「結局、お互いの両親まで巻き込んで話し合いをしたんですが、隆史は最後まで『不倫なんかしていない、誤解だ』と言い続けていました。でも、私が隆史を信じられなかっただけでなく、結婚生活にも疲れてしまっていたので、ほんのわずかの慰謝料をもらって協議離婚ということにしたんです」
幸い、離婚してすぐに就職口が見つかった。給料は前の会社よりも下がってしまったが、なんとか一人暮らしをしていける程度の収入は得られた。