歴史的にも闇の世界の話とされ、過去の出来事と捉えられがちな人身売買の世界。海外ドラマでよく見る光景だが、実は今もなお世界中で続いている。今回は、人身売買がきっかけで人生が変わってしまったママ友の話をしよう。
※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。
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6歳の息子を持つごく普通の主婦である亜由美(仮名・32歳)。海外ドラマが好きで英語をそのままで観たいと英会話の講座受講を考えていた。だが、そんなときに子供を公園に連れて行った時に外国人のママと親しくなった。その彼女から驚くような話をされた。
「ただお金を稼ぎたかっただけなのに……」
「一生家族に会えないと思った」
小学生の子供がいるアデリータ(仮名・37歳)は亜由美にそう話し始めたという。
©︎gettyimages
メキシコで生まれ、8人家族の長女として育ったアデリータは、高校へは行かずに家族を養うために地元のレストランに就職し働いていた。父親とアデリータ2人分の給料でも毎月苦しい生活を送っていた。
17歳になった誕生日の次の日、男性客から「正規の方法ではないが、1万ドルお金を用意してくれればアメリカに行けるよ。アメリカに行けば今の3倍以上稼げる」と声を掛けられたのだ。
レストランに何度か来たことのある男性客だったこと、厳しい生活から抜け出すためにお金が欲しかったことがあいまって、アデリータはアメリカへ行く決心をした。
家族や親戚に頼み、1万ドルを用意したアデリータは数週間後、国境を越えたら連絡すると家族に言い残しアメリカへ向けて出発した。待ち合わせ場所には大勢の人が国境越えを待っていた。
皆揃ったところで、アメリカとメキシコの国境にある川に向けて砂漠のような場所を黙々と歩いた。
川に到着すると十数名乗れる船が待っていたが、国境警備隊員に見つかる前に渡る必要があり、船には乗らずに泳いで渡った。
「これで晴れてアメリカに渡れる!」その胸の高鳴りを感じながら、そっとそっと。
川を渡りアメリカへ入国すると、コンテナ付きの大型のトラックが停まっていた。ガイドからは「見つからないうちにすぐにその場所から離れなければいけない」と言われ、何の疑いもなしに急いで車に乗り込んだ。
数時間後にトラックが停まり後ろの扉が開いた。
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そこには、銃を持った男性が立っていた……。
Text:女の事件簿調査チーム