「薫堂さんは、松浦さんの一筆箋をオーダーされる前にも、ご自身の名入れをした原稿用紙などをオーダーして使ってくださっていました」と語るのは、舛屋さんの５代目 川口昌洋さん。
じつは、満寿屋として元々販売していた一筆箋にはマス目入りのものは存在せず、薫堂さんから「原稿用紙と同じマス目の入ったものが欲しい」とのご要望で誕生したんだとか。
なので、基本的には既製品でマス目の入った一筆箋は存在しないそうです。
他にも薫堂さんは、自身が顧問を務める日光金谷ホテルのメモ帳などもオーダー。
創業140周年記念グッズのひとつなのですが、当時140文字だったTwitterと周年数140をかけた「ツイッター用箋」という洒落た試みと、途中から色が変わるデザインで人気を博し、現在も継続して販売中です。
このように 薫堂さんから たくさんのオーダーを頂いているのですが、じつは川口さんは まだ一度もお会いしたことがないんだとか。最初のオーダーはご本人からの連絡だったのですが、それ以降は秘書の方とのやりとり。
薫堂さんのおかげで たくさんの方々に知っていただけたことが大変ありがたいのに、きちんと御礼もできないままなんだそう。
あらためて、名入れのサービスのスタートについて川口さんに尋ねると、「もともと作家先生それぞれのお好みに応じて罫線を入れた原稿用紙を作っており、それからは既成で35種類ほどのバリエーションで展開していました。ところが、ある雑誌で取り上げて頂いたことをきっかけに お客様から "あの先生と同じ原稿用紙が欲しい"、"自分の名前の入った原稿用紙を作りたい"といったお声も多く頂くようになり、そちらに対応するかたちで はじまりました」。
ちなみに、罫線のデザイン自体をお好みのものに変更することや、別途追加料金は発生しますが、印刷の色を既製品の中に無い色で指定することも可能。
さらに、データや実際に紙に書かれたものをお渡しすれば、ロゴや自筆の名前を印刷することもできるそうです。
「僕の場合は、昔ながらの、クラシックなものが好きで、このクリーム色の紙に金赤罫が満寿屋っぽくて気に入っていますが、判型のアレンジなんかもできるなら、何か作ってみたい」と、松浦さん。
「いまってパソコンや携帯電話で済む時代になりましたが、だから逆に、手書きでお手紙を書くことが大事だったり、文章を書いて残しておくことの価値にも あらためて気づかされました。データは簡単に消えてしまったり残しにくいけど、紙に書いたものは ずっと残せる」。
川口さんにご紹介いただいた、いろいろなサイズの紙に、どんなレイアウトの罫線を入れるのが良いのか、さまざまなアイデアを思案する、松浦さん。
ちなみに、一般の方で定期的に原稿用紙を使う方が少なくなっているため、満寿屋ではデイリーに使えるノート「MONOKAKI」なども展開。
一筆箋などと同じく、満寿屋オリジナルのクリーム紙を使用し、表紙には江戸時代より続く老舗、杉原商店の越前和紙・羽二重紙を使用した贅沢な逸品で、こちらも気になります。
「紙とか手書きが好きな者からすると、キリがない…。満寿屋さんなら、なんでも作れそうだし」。ボソっと つぶやく松浦さん。
素晴らしい製品ばかりで拝見しているだけでも楽しく、時間が経つのを忘れてしまいそうですが、いつまでもお邪魔できないので…。そろそろオーダーしておいた一筆箋と原稿用紙を受け取ります。
一筆箋（50枚天糊綴じ）「弥太郎用箋」は、名入れするのは 20冊からで、１セット単価 715円で 1万4300円。原稿用紙（200字詰め／100枚袋入り）「弥太郎用箋」も同様に 20冊からで、１セット単価 1100円で 2万2000円。
初回は版代として 3300円がプラスされますが、一度作ってしまえば ずっと残ります。
「やっぱり、自分のためだけの特注品をオーダーするのって、すごく豊かなこと。贅沢だけど、ほんの少し頑張ればできることなので、ぜひ試してみたほうがいい」と語る、松浦さん。
「これからも薫堂さんに作っていただいたものを、なくなる度に追加でオーダーさせていただきながら、その時々で あたらしい何かも作れたらいいなと思います」。
この日の装いも素敵だったので、何を着ていたのか尋ねてみると、ジャケットはフランスのもので、シャツはCOMME des GARCONS SHIRT FOREVER（コム デ ギャルソン・シャツ フォーエバー）。パンツはCIOTA（シオタ）で、靴はALDEN（オールデン） のコードバン「990」。今回もFORZAらしい着こなしで、一同感激。
