ワールドカップの時だけ体を重ねる「4年ごとの恋人」。お互い結婚しても「20年続く」二人の謎。

綾子（仮名）と航平（仮名）は失われたときを、取り戻すかのように何度も体を重ねる。

「久しぶりだったね」

綾子は航平に背を向けてバスローブを着ながら恥ずかしそうに笑った。

「俺たち、今度こそ一緒になろう」

２人が初めて知りあったのは、ワールドカップ日韓大会の最中だった。あれから20年が経った。

※この記事は取材を元に構成しておりますが、個人のプライバシーに配慮し、一部内容を変更しております。あらかじめご了承ください。

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「ねえ、一緒に飲まない？」

高円寺のスポーツバーで代表戦を見ていた航平に声をかけたのは綾子だった。綾子は航平の顔が気に入ったし、航平は綾子の声が好みだった。２人はワールドカップがもたらす熱病のような興奮に背中を押されるように、ビールを飲んだ。

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時は2002年6月。バーのスクリーンでは日本対ベルギー戦が映し出され、客たちは日本の猛攻に熱狂していた。ワールドカップでの日本の初得点。強豪ベルギーから勝ち取った勝ち点１。スポーツバーだけではない。日本中が湧いていた。