夫が海外に行ってから、葵と圭吾は一緒にいる時間が増えた。圭吾の家に何日も泊まることもあったが、そんな関係が半年を過ぎたころ雲行きは怪しくなる。
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ある日から、電話の数が増えスマホのロック画面は、不在着信とメッセージで埋め尽くされるようになった。
「圭吾と一緒になるため、夫との離婚を考えていたときもあるんです。でも」
心が凍る出来事が起きる。いつものように、圭吾の家で愛し合ったあと他愛もない話をしていた。
「この前さ、夜中にテレビでやってた映画を観たんだけど、それがさ奥さんが若い子と不倫して旦那さんがその若い子を殺すって話で……。僕だったら、その旦那を殺すけどね」
そのひとことに、好きという気持ちが恐怖心に支配されていった。葵は、すぐに離れることを決めた。別れてくれるのか不安だったが、意外にも圭吾はすんなりと別れを受け入れたという。
だが、その翌日から非通知の無言電話がはじまったのだ。異常な数の非通知の不在着信は、圭吾を思い出させた。
「ある日、うっかり美容院の前を通りかかってしまったんです。通り過ぎてから思い出して、ふりかえると、圭吾がこっちを見ていたんです」
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