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篠原ともえを「世界的クリエイター」に押し上げた、【草加レザーの革職人】が凄かった。

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篠原ともえさんの作品が世界でもっとも歴史のある広告賞、ニューヨークADC賞を受賞しました。

かつて茶の間に笑顔を振りまいた篠原さんは、いまや当代きってのクリエイターです。作品名は「THE LEATHER SCRAP KIMONO」。篠原さんとともにその作品をつくりあげたのが本日の主役、伊藤産業をはじめとした皮革産業の地、草加の面々です。

水墨画のような幽玄な世界を表現

「篠原さんは日本タンナーズ協会が立ち上げたウェブサイト『革きゅん』とコラボレーションして作品をつくられていました。栃木レザーさんに続いて声がかかったのが弊社。篠原さんは かねて着物を革でつくりたいという思いがあったそうです。着物なら しなやかな革が必要です。そこでグローブの革をつくってきた我々に白羽の矢が立ったというわけです」(伊藤産業、伊藤達雄社長)

1952年に埼玉・草加市で創業した伊藤産業は創業以来、グローブに使われる鹿や羊の鞣しを得意としてきました。

「我々の主力商品であるギリシャラムを まずはおすすめしたんですが、篠原さんは当時試験中だったエゾシカに目をつけられた。着物という日本の伝統文化を打ち出すのだから、革も日本のものがいいと」

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撮影:井上佐由紀 ©日本タンナーズ協会

草加の鞣製業者は地場産業の振興を目指し、08年にLEATHER TOWN SOKA Project teamを発足、その一事業として16年にスタートしたのが U-taaan PROJECTでした。全国の害獣問題を解決すべく、皮を利活用する試みです。

撮影:井上佐由紀 ©日本タンナーズ協会

「THE LEATHER SCRAP KIMONO」の表層には まるで水墨画に迷い込んだような幽玄な世界が広がります。これをかたちにすべく、篠原さんがつけた注文は本来なら捨てられる端切れを使いたい、そこにグラデーションを描きたい、そしてステッチを入れたくない、という3つでした。

撮影:井上佐由紀 ©日本タンナーズ協会

「端切れに こだわられたのは そのアウトラインが山の稜線を彷彿とさせるから。サステナブルな時代を考えても素晴らしいアイデアです。グラデーションはプリントでも表現できますが、どうしても のっぺりしてしまう。だから篠原さんは手吹きを選ばれました。もとより伊藤産業を代表する技法でしたが、染色職人の桐原義雄が引退して事実上、休眠状態でした。現スタッフにできるものはおりません。桐原を呼び戻して担当してもらいました。むかしとった杵柄ですからね、ほどなく勘をとり戻しました」

職人も頭を抱えたのがステッチを使わずにレザーピースをつなぎあわせることでした。

撮影:井上佐由紀 ©日本タンナーズ協会

「地元草加の縫製会社、レファンズさんがお持ちの熱圧着という技法を使いました。従来の熱圧着では強度に難がある。糊の粘度を見直す、プレスに一手間加えるなどの様々な工夫を凝らしてようやく ものになりました。とはいえ山に見立てたピースは80枚にのぼります。その柄をほとんど一発勝負で揃えなければならない。神経をすり減らす作業です。篠原さんは つきっきりで見守っていましたね」



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