■実燃費でリッターあたり20kmLも可能
搭載されているエンジンは、「OM654M」という2.0リッターのディーゼルターボ。エンジン単体で200ps(147kW)、440Nmを発生する。トランスミッションは、9速ATの9G-TRONICだ。そして、エンジンとこのトランスミッションの間にマイルドハイブリッドシステムのISGを配置する。ISGは、短時間、最大で20ps(15kW)、208Nmのブーストが可能となる。
もともと、高トルクかつ省燃費が売りのクリーンディーゼルにブーストが加わるので、発進加速や中間加速の力強さ、そして燃費の良さは、日本国内で使うならば一切不満を感じることはないはず。WLTCモードは17.9km/Lだが、時速100kmでの高速巡行では、1500rpm程度の回転数を維持し続け、20km/Lを超えるレベルの低燃費を叩きだすことがある(筆者の乗るS205型のC220dワゴンの場合)。一度の給油で1000km走破は余裕で可能、トヨタのハイブリッド車も真っ青の低燃費達成が可能だ。
アクセルを踏めば速く、ゆったりと流せば超低燃費の快速ステーションワゴン。その素養を備え、オフロードテイストの色気が与えられたクロスオーバーSUVタイプを実現したのが、C220d 4MATICオールテレインなのだ。
■オールラウンダーとして、所有欲は存分に満たせる
インテリアも、メルセデスの最新技術が多数採用された見事な仕上がりとなっている。基本的には、新型Cクラスセダンやステーションワゴンとインテリアの仕様は同じで、発色が良く、視認性の高い12.3インチの液晶メーターやインパネセンターに鎮座する縦型大型タッチディスプレイも最新鋭だ。
また、トリム部品の間に仕込まれたイルミネーションも、先代のCクラスよりも遥かに強みを増しており、艶やかでよい。「昨今のメルセデスは、イルミネーションが派手過ぎて下品」という声も聞かれるが、色味次第で、上品にすることもできると思う。ぜひ自分好みの調色を探ってみてほしい。
さらに、オールテレイン用の特別装備としては、前後左右のクルマの傾きやステアリングの舵角などを確認できる表示モードの追加や、悪路走破のために追加された、専用の「OFFROAD」、「OFFROAD+」モードの表示などだ。
オフロード走行をする方が、SUVではないオールテレインを選ぶことは考えにくいものだが(せいぜいキャンプ場にある未舗装の誘導路を走る程度じゃないだろうか)、市街地から悪路まで、どこでもこなすことができるオールラウンダーとして、所有欲は存分に満たせるはずだ。
■今がラストチャンスかも
Cクラスオールテレインが魅力的なモデルであることは間違いないのだが、優れた内燃機関といえ、走行するために、燃料を消費する、つまりCO2を排出することは避けられない。
電動化=バッテリーEV化を進めるメルセデス・ベンツは、2030年をひとつの目安としており、「2030年に市場の受け入れ体制が整っていれば、販売するすべての車種をEVにする用意がある」とアナウンスしている。もうひと世代、進化したクリーンディーゼルが登場する可能性もあるが、これが最後となる可能性もある。優秀なクリーンディーゼル車を手に入れるのは、今がラストチャンスといえるのかもしれない。
Text:Kenichi Yoshikawa
Photo: Mercedes-Benz
Edit:Takashi Ogiyama