夫婦のコミュニケーションでよく話題になるのが「呼び方」です。
子どもが中心の生活になると、お互いを「パパ」「ママ」と呼ぶようになり、その場に子どもがいなくても、相手のことを「パパ」「ママ」としか呼ばなくなるのです。
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呼び方とは実に奥が深いもの。
それまで「○○さん」と上の名前でさんづけで呼んでいた人を、ある日を境に下の名前で「○○ちゃん」と呼ぶようになると、心理的距離がぐっと近づく。
逆に、仲のいい先輩が昇進したので「○○部長」と呼ぶようになると、敬意は示せるけれど心理的距離は遠くなり、飲みに誘いづらい。
というように、「名前の呼び方」はその人との距離を決める大事なものです。
結婚前は下の名前やあだ名で呼んでいたふたりが、「パパ」「ママ」と呼び合うようになれば、当然ふたりの関係は変わってきます。
さらに、子どもがいる家庭は、ただでさえ子ども中心に話が進むことになりがち。子どもを介して話したり、話題も子どものことばかりになったり。
このように互いに「パパ」「ママ」と呼び合い、家庭における「パパ」「ママ」の役割を全うし続けると、結果的に夫婦としての関係性は弱くなります。夫婦ふたりで他愛のないことを話したり、自分たちのことを話す機会は減っていくわけです。
将来子どもが家を出ていったあとに話題に困り、「ねえ」「おい」と呼び合い、結局、そのあとは孫を中心に「じじ」「ばば」と呼び合うようになる......。
もちろんそのことで、「家族になれた」という実感が湧くこともあるでしょうし、お互いが満足していれば問題はありません。ですが、「倦怠期だな」とか「ちょっと恋人の気分を取り戻したいな」と思ったときには、呼び方を変えるといいでしょう。
たまには夫婦だけでどこかに出かける。そのときだけは「パパ」「ママ」という呼び方をなるべくしない。話題もなるべく子ども以外のことを話す。そういう「取り戻しデー ト」「リハビリデート」をしてみてはどうでしょうか?
最初は気恥ずかしいし戸惑うかもしれませんが、新鮮な気持ちがよみがえるはずです。
外での呼び方にも気をつける
同様に第三者と話していて、パートナーのことをどう呼ぶ(言及する)か、というのもよく話題になるテーマです。
かみさん、嫁さん、奥さん、妻、家内......。 旦那さん、主人、亭主、うちの、夫、○○(名字)......。
ある友人夫婦は新婚当初、妻のほうから「私のことを外で嫁と呼ばないでほしい。奥さんと呼んでほしい。そのほうが敬意を感じるから」とオーダーがあったそうです。
「下の名前で呼びたいけれど、ママ友のなかで浮いちゃう」「会社の同僚たちは、みんな『嫁さん』なので合わせてる」といった事情はあるとは思いますが、なるべくなら相手の 希望を優先したいものです。
「たかが呼び方」と思うかもしれませんが、「名は体を表す」という言葉があるとおり、呼び方は関係を規定する大事なものです。
一度は、「どう呼ばれたい?」と夫婦で話し合ってみるといいでしょう。
関係を変えたいなら、呼び方を変える
Text:Tatsunari Iota
ドクト

『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』/五百田達成
「夫婦には会話が必要」「ケンカするほど仲がいい」とはよく言われます。
でも、なかなかうまくいかない。
面倒だったり、ギスギスしたり、イラっときたり、相手の機嫌を伺うばかりで肝心なことが言えなかったり、つい嫌味を言ってしまって後悔したりする。そんなこと、ありませんか?
結局のところ、夫婦がうまくいくとは、夫婦のコミュニケーションがうまくいくということ。そして、コミュニケーションさえうまくいけば、二人の関係はうまくいきます。
五百田達成(いおた たつなり)
作家・心理カウンセラー。 米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。 専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」。サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。
「あさイチ」(NHK)、「スッキリ」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」(TBS)ほか、テレビ・雑誌などのメディア出演も多数。 著書『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』『不機嫌な妻 無関心な夫』『部下 後輩 年下との話し方』(以上、ディスカヴァー)はシリーズ100万部を超えている。オンラインサロン「おとなの寺子屋〜文章教室〜」も好評。