真一さんの戸籍から、真奈美さんと結婚する前に離婚歴があることがわかったのです。さらに驚くべきことに、その前妻との間に子供が1人いることもわかりました。
役所関係の手続きは、生前の夫に全て任せていた真奈美さん。初めて知る衝撃の事実に気が動転しましたが、弁護士によると、真奈美さんと2人の子供のほかに、前妻との間に生まれた子供にも、相続権があるとのことでした。
もし、真奈美さんとその子供達が相続放棄をした場合には、前妻との間に生まれた子に相続が行くことになり、それはつまり300万以上もの借金をその子供が全て背負うことになる、ということを意味します。
相続放棄は原則死亡(相続放棄ができると知った時)から3ヶ月しか手続きを取ることができません。
モタモタしていると、そもそも手続きを取ることすらできなくなってしまいます。
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真奈美さんは前妻との子供とコンタクトを取るべきか悩みましたが、今まで一回も連絡をとったことがなかったこと、今どこに住んでいて何をしているのか、そもそも連絡先すら知らない状況だっため、深追いすることをやめるとともに、自分達の相続放棄の手続きを進めることにしました。
とにかく自分達に借金がこないようにしないといけない……。真奈美さんはそんな思いでいっぱいでした。
相続放棄の手続きも滞りなく完了し、金融業社にもその旨を伝えていました。
自分達に借金が来なくなったことに安堵していたある日のこと、真奈美さんの元に知らない番号から着信がありました。
電話に出てみると、相手は田崎敬浩(仮名)と名乗る男性で、なんと夫の前妻との間に生まれた子供だったのです。
「電話ではお話しできないことなので、面会できませんか? コロナ禍で申し訳ないのですが、どうしてもお伝えしたいことがあり......」
絞り出すようにいう男性の勢いに押され、真奈美さんは田崎氏と会うことに了承します。
後編に続く。
ライター:誉田学