■後席がユニークだった、日産「ティーノ」
「快適・快速 ハイトワゴン」をコンセプトに開発された6名乗車のミニバンとして、1998年12月に登場した、日産「ティーノ」。少し前に発売された9代目サニー(B15)のプラットフォームを使用し、2.0L 直4ガソリンと1.8L 直4リーンバーンエンジンのラインアップで登場したティーノです。2000年に、限定生産ながら日産として初のハイブリッドモデルが設定されたモデルでもあります。
ティーノの前席は、前出のエディックスように独立したシートではなく、助手席側と一体のベンチシート。発表当時の資料にある「いざというときには3名乗車を可能とした」という説明が示すように、前席3名乗車を日常的に使うには厳しい設計ではありました。
ただ後席は3座独立で、ダブルフォールディングや脱着機構、リクライニング機構があり、乗車人数や荷物に応じてアレンジできるというユニークな仕組み。センターシートを外して、両サイドのシートを内側へ寄せて取り付けると200mmのロングスライドも可能で、一番後ろまで下げるとニールームは650mmを確保することができ、後席でゆったり過ごすことができました。
2000年の一部改良時には、前席がセパレートタイプのシートとなる5人乗りモデルを追加。前後のウォークスルーを求める声が多かったのでしょう。
■何よりもデザインが衝撃だった、フィアット「ムルティプラ」
イタリアのフィアット社から販売されていたユニークなマルチパーパスカーである、「ムルティプラ」。日本では2003年に発売され、2010年まで販売されました。
すべて独立した前3席、後3席の6人乗りで、ボディサイズは全長4005mm×全幅1875mm×全高1670mm、ホイールベースは2665mm。お気づきのように全長が短いわりに、全幅が非常に広く、その分室内空間もゆとりがあり、大人3人が横一列に3人ゆったりと座れるサイズ感が特徴的なモデルでした。
ただ、ムルティプラが話題となったのはシートではなく、その個性的なデザイン。ずんぐりとしたスタイリングにヘッドライトは通常の位置がロービーム、Aピラーの付け根にハイビームを配置というレイアウトで、ボンネットは低く構えているのにキャビンゾーンはふっくらと丸い形状で、一度見たら忘れられないような独特のデザイン。エンジンは1.6L 直4DOHCガソリンNAが搭載され、トランスミッションは5速MTにFFのみ、という割り切ったパワートレインとなっていました。
デザインがあまりにも酷評されたため、2004年のマイナーチェンジでフロント周りが大きくリファインされ、いたって普通のデザインになりましたが、マイナー前の方が、インパクトがあって好みだという人が多いことでしょう。
■まとめ
定着することなく、廃れてしまった前席3列シートのモデルですが、バッテリーEVとなると、内燃機関車よりもパッケージングの自由度が高まりますので、将来的にはアレンジの一つとして復活することは考えられます。より幅広い選択肢が用意されることになると、クルマ選びがより楽しくなりそうですね。
Text:Tachibana Kazunori,MMM-Production
Photo:HONDA、NISSAN、STELLANTIS
Edit:Ogiyama Takashi