「いえ、全然そんなことないですよ。むしろ変わり映えしない毎日の中で、専業主婦にとってちょっとした癒しみたいになってますよ。とか言ったらキモいと思われるかもですけど(笑)」
「全然キモくないよ、それならよかった! 俺も毎日家と県庁の往復だしさ、付き合ってくれてありがとね」
「子育ての先輩としていろいろ聞けるのも助かってます、この前のおすすめの子供用水筒とか」
「あれいいよね! うちの奥さんもあれこそ最強って周りにめっちゃ言ってる!」
メッセージが面倒じゃないかだなんて恋愛初期のようなことを聞きながらも、互いに家族の香りを漂わせて、恋愛感情になりそうになることも、実際に会うことになりそうなことも避け続けて、なんならいつまでもダイレクトメッセージ機能を使わずにLINEなどに切り替えてもいいのに、それもせずにメッセージを重ねていた。
会うこともせず、通話もせず、恋愛的なやり取りも、エロもない。たまに自撮り写真のやり取りはあるけれど、無難な姿を見せ合うだけのもの。そんな毎日のやりとりは夏実にとっての日々の中で、確かに小さな支えとなっていた。
——でもさ、不倫や浮気をしているわけじゃないし。
ちょっとした、久々のメッセージのやり取り。正直、マサト先輩をリアルで知っていた頃の記憶は曖昧な部分もあるし、今の今まで忘れていたような人だけど、だからこそちょっぴり美化されている部分もあるわけで、それもまた悪くない。
RANKING
2
4
1
2
4
5