「ごめん」
「私もごめん」
「ごめんね」
「俺も悪かった」
「ごめん」と言われたら「ごめん」と返す。相手はがんばって謝罪の言葉を絞り出したの
だから、自分もがんばる。
これが夫婦ゲンカの理想の終わり方です。ところが、これが案外難しい。
「ごめん」
「......いいよ」
「ごめん」
「うん、わかったからもういい」
などと答えてしまいがち。これだと結局、「勝ち負け」がついてしまい、「ごめん」と言ったほうには、釈然としない気持ちが残ります。
会社の上司でも、懐の深い上司は、部下から「ミスをしてすみません」などと言われたとき、「いや、俺の指示の仕方も悪かった」と謝ります。「いえ、そんな」と言いつつ部下 はホッとでき、円満に事が終了します。
そもそも夫婦ゲンカで、どちらかが100%悪いというケースは稀でしょう。自分にもどこかに必ず非はあるはず。
その非は相手の非に比べたら小さいかもしれません。それでも、自分の小さな非を認め て、非の部分については謝る。それが結局、解決への近道です。
「何がごめんなのか言ってみて」はナシ
「ごめん」
「何が『ごめん』なのか言ってみてよ」
これはよくないパターンです。
相手の「ごめん」をまったく受け入れていない。「ごめん」を跳ね返しているようなも の。解決の方向に向かわないどころか、ますます混迷していくでしょう。「適当に謝ってるな〜」と感じたとしても、まずは「謝った」ということを認めてあげたいものです。 いっぽう、謝る側でよくないのがこれです。
「誤解を招くような言い方をしていたとしたら、ごめん」
「そういうふうに聞こえたなら、ごめん」
「ごめん」と言いつつも、まったく謝罪になっていない。 言外に「そういう受け取り方をするあなたが悪い」「誤解をするあなたがいけない」と言っているのと同じ。近年政治家が口にするもの言いですね。
国民を馬鹿にしている政治家のような物言いを、大切なパートナーに向かってやっていないか、いま一度セルフチェックしたいものです。
夫婦ゲンカは勝ち負けにこだわらない
Text:Tatsunari Iota
ドクト
「読むだけで夫婦仲が改善できる」必読書はこちら『不機嫌な妻 無関心な夫 うまくいっている夫婦の話し方』/五百田達成
「夫婦には会話が必要」「ケンカするほど仲がいい」とはよく言われます。
でも、なかなかうまくいかない。
面倒だったり、ギスギスしたり、イラっときたり、相手の機嫌を伺うばかりで肝心なことが言えなかったり、つい嫌味を言ってしまって後悔したりする。そんなこと、ありませんか?
結局のところ、夫婦がうまくいくとは、夫婦のコミュニケーションがうまくいくということ。そして、コミュニケーションさえうまくいけば、二人の関係はうまくいきます。
五百田達成(いおた たつなり)
作家・心理カウンセラー。 米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。
東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。 専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」。サラリーマンとしての実体験と豊富なカウンセリング実績に裏打ちされた、人間関係、コミュニケーションにまつわるアドバイスが好評。
「あさイチ」(NHK)、「スッキリ」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」(TBS)ほか、テレビ・雑誌などのメディア出演も多数。 著書『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』『超雑談力』『不機嫌な妻 無関心な夫』『部下 後輩 年下との話し方』(以上、ディスカヴァー)はシリーズ100万部を超えている。オンラインサロン「おとなの寺子屋〜文章教室〜」も好評。